「二人で飲み? 誘ってくれへんし」
千雪は軽く声をかけた。
「千雪、お前……」
「や、ちょっと用あって辻に連絡入れたんやけどな」
何か言いかけた研二を遮るように三田村が言った。
「何や、お前、おもろいことやりよったて、辻が言うとったわ。おもろいことて、何やってん?」
隣でことと次第によっては許さないぞくらいな勢いで研二が千雪を睨みつけている。
「おもろいことって言うたら、せやなあ」
適当にごまかす方法を考えながら千雪が小首を傾げたその時、背後から声がかかった。
「俺も聞きたいもんだな」
振り返ると工藤も眉間に皺をこさえて見下ろしている。
「ちょ、待て! これ、どないしたんや」
研二が千雪の首筋に残る痕に気づいて指を伸ばした。
「転んだんや」
千雪は研二の手をさり気に振り払う。
「ウソつけ。お前から聞いたとかって渋谷からわざわざ連絡が入って、良太や俺の名前は出て来てないとか言ってたが、お前、『ルーファス』に行ったな?」
工藤が断言するように言った。
「何をしたんだ? 警察がこんな短期間にやつらを挙げて所業を暴くとかあり得ないだろう」
「何のことです?」
研二は今度は工藤に険しい目を向けた。
すると、「なるほ……これか」と言いつつ三田村が携帯でぐぐった画面を研二に見せた。
研二はそれをざっと見ると、「何をやったんや?」と千雪に詰め寄った。
「まるで俺が犯罪者かなんかみたいやん」
千雪はどうやらごまかしは効かなそうな三人を前に、「泣き寝入りしとる被害者の代わりに警察にこんな事件がおまっせて、ちょおっと知らせたっただけやし」
「渋谷も絡んでいるのか?」
工藤が凄んで聞いた。
「や、渋谷さん巻き込むまではいかんかったし、ただ、所轄動かすために、ちょこっと情報流してもろたくらいで」
へらっと話す千雪に、「危ないことはするなて言うたやろ!」と研二が静かに怒る。
「や、俺はそんな危ないことはせえへんて。危ない担当は京助にお任せやし」
悪びれるようすもなく千雪は言った。
「それより、良太ちゃん、大丈夫なん?」
いきなり矛先を向けられた工藤は「あ、ああ。大丈夫だろう」と答えたものの、さっき具合が悪そうだった良太の顔を思い浮かべると、事件のことを何かで見て、もしやPTSDとかじゃないだろうな、とまた一抹の不安に駆られる。
「何だよ、ここだけの密談とか?」
ビールを飲みながら絡んできたのは流だった。
「あああっ! こないだのこええ兄ちゃん!」
流は研二に気づいて声を上げた。
「何や、お前、ここで何しとんや」
研二は流に応戦する。
「ドラマに出るんやて」
一応千雪がちょっと説明してやった。
その時また千雪の携帯が鳴った。
画面に渋谷の名前を見て、千雪は正直、助かったと思いつつみんなから離れて携帯を受けた。
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