かぜをいたみ83

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   ACT 5
 
 

 パリ大学で行われた法学会に、宮島教授のお供で出席した千雪が、良太と会ったのは八月下旬のことだった。
 千雪がパリに出向いた数日後に、世界的に有名なデザイナー、アルトゥール・マルローに気に入られたアスカがマルローのコレクションでランウェイを歩くことになり、少し滞在を伸ばしてパーティに一緒に出てほしいとアスカに頼まれたものの、即座にお断りしたのだが。
 小夜子からも、友人が個展を開いているが、今自分は行けないので代わりに見て来てほしいと頼まれたために、滞在を伸ばすことになり、仕方なくOKしたのだ。
 今回、京助は京助で国内で学会があり、千雪一人でのフライトだったのだが、ショーが行われる会場に出向くと、カメラマンの井上やアスカのマネージャー秋山、それに良太の姿があった。
 会場に来る少し前には工藤からも連絡が入り、そっちにいるんなら俺が間に合いそうにないから代わりに行けと言われ、また工藤に都合よくあしらわれたようだ。
 隣に座っていたのは良太だった。
「夕べ電話で、ショーには間に合いそうにないんでお前が行け、言われて。ほんま強引やからな、あの人。あ、俺もみんなと同じホテルやからよろしく」
 千雪は自分では珍しいくらい愛想よく声をかけたつもりだったが、良太は疲れているのか、「はあ、それは…どうも」と言っただけでショーに目を向けた。
 ショーの後のパーティでは仕方なくアスカをエスコートしたが、良太は遅れている工藤の代わりにマルローや関係者と挨拶を交わし、えらくマルローにも気に入られたようだった。
 なかなかやるやん、良太ちゃん。
 千雪は微笑ましく良太の姿を追っていたが、やがて工藤が到着すると、良太は嬉しそうに工藤を迎えていた。
 あのオッサンをあんなに嬉しそうに迎えてくれるとか、健気なやつやんな、良太ちゃん。
 シャンパングラスを手に華やかなパーティをぼんやり眺めていると、アスカに手を引かれ、マルローにも紹介された。
 パリは小夜子と紫紀の結婚式を最初に、数回来ているし、学会もあったのでとりあえずフランス語も何とかしゃべれるようにはなったが、リエゾンだの女性名詞男性名詞だのクソめんどくさい言葉だと、京助には喚き散らしたことがある。
 と、何かきつい眼差しを感じて振り返ると良太だった。
 ん? 俺、何かしたか?
 千雪と目が合うと良太は反らしてしまったが、千雪は小首を傾げた。
 


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