二か月ほど前に、悠がこのギャラリーで作品展を開いたのだ。
その時に悠が描いたもののいくつかが、今藤堂のマンションに飾られている絵である。
「うまーい!」
浩輔が美味しそうに食べているのを見ると、藤堂の気持ちも幾分か和らいでくる。
「そういえば、すみません、パーティの準備、悠くんだけで大変だし、俺、仕事一段落ついたら、手伝いに行きますから」
浩輔が思い出したように言った。
「ああ、いや、大丈夫だろう。悠の友達がきてくれてやってくれてるんだ」
「というと、美大の?」
「そう。アーティストたちは作品ができるまでは気難しいからね」
「そうなんだ。でも料理の準備とかあるし、とりあえず、あとで顔出しますよ」
「だったら、一緒に行こう。俺もカップ麺のCF撮りが延期になったから、空いてるし。ちょっと調べものがあるが、コースケちゃんのスケジュールに合わせるよ」
藤堂はサンドイッチを少しつまむと、自分のデスクへと向った。
ノートを立ち上げ、とりあえず次の仕事の準備を始めたのだが、藤堂の手はいつしか止まっていた。
「お前、甘く見られてるだけじゃねーの? いいパトロンってとこだろ、せいぜい。今時のガキの心理なんざ」
河崎に言われた時は、悠はそんなやつじゃないと反論してみたものの、いささか動揺するところもあった。
根拠はない。
悠を信じるならば、だ。
信じたいと思う反面、若い悠がいつ可愛い女の子に目を向けてもそれはそれでありかとも思うのだ。
あんなに可愛いんだ、女の子だって放っちゃおかないさ。
悠の顔を思い浮かべると、思い切りデレた顔になっているのは自覚している。
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