「あとひと月しかない。バイトもいいが、こちらとしても企画という形で君の作品展をプロデュースするわけだ。お客様をお呼びするのに、いい加減な作品を並べるわけにはいかないからね」
「俺が、んな、いい加減なもん描くわけないだろ!」
悠はまた精一杯藤堂にくってかかる。
「いい作品が出来たら、ギャラリーで買い取ることもないとはいえないからな」
尊大に言い放った悠に、すかさず藤堂はそう言い返す。
悠の瞳は大きく、肌の白さと対照的に真っ黒で、それは真っ直ぐ藤堂を見据えている。
やっぱりアイちゃんが懸命に威嚇してるみたいだ。
ちょっと心の中でほくそ笑む藤堂だが、一応表には出さない。
「あんたこそ、その言葉忘れるなよな! 失礼します!」
バタン!
ドアの閉まった勢いでギャラリーの空気が揺れる。
「藤堂さん面白がってますね? あの子からかって」
悠が出て行くと、テーブルを片づけながら啓子が笑う。
「つつきがいがあるね、弾力性があって」
藤堂はフフンと頷く。
藤堂の頭の中ではキャンキャン訴えるアイちゃんにさらにイメージが重なっていく。
「まあ、とっても元気でよろしいこと。楽しい作品展になりそうね」
にこにこと美保子が苦労のない台詞を口にする。
「じゃ、五十嵐くんのポスターや案内状は準備しておきますからよろしくお願いします」
藤堂は鼻歌でも出そうなほど心を弾ませてプラグインのオフィスに戻った。
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