「ぬかりはない。とっとと行け、達也」
浩輔からコーヒーを受け取った藤堂が振り向きもせずに答えると、河崎は三浦を従えて出かけていった。
「藤堂さんの今度のプロジェクト。そろそろデモできますけど」
サンドイッチを片手に浩輔はパソコンのファイルを開く。
「『ハート』シリーズでブランディング効果を狙うってことで進めてます」
藤堂はにっこり笑い、浩輔の頭をくりくりと撫でる。
「ありがとう。さすが浩輔ちゃん、助かるよ」
「まぁた、子供じゃないんですからぁ」
今回クライアントの宝石会社から依頼されたのはジュエリーのオンラインショップ立ち上げのプロジェクトだ。
広告宣伝からオンラインショップのシステム構築までという仕事だが、方向性が決まったら、プログラミングは藤堂が、WEBデザインやコーディングは浩輔が進めていくという手はずになっている。
「それより、藤堂さん、マミちゃんと仲直りしたんですか?」
思い出したように浩輔が振り返る。
「それがさ、聞いてくれるか? 浩輔ちゃん」
可愛い子に映画に誘われたんだ、と藤堂が喜んでいた日からまだひと月と経っていない。
仕事で知り合ったモデルのマミとは食事の約束をしながら、仕事で行けなくなったと断りのラインを入れたのが二回ほど。
二回目はちょうど三日前のことだ。
彼女とデートの約束をした藤堂が意気揚々とオフィスを出ようとしたその時、携帯が鳴った。
「今から札幌に飛べだあ? 俺はこれからマミちゃんとデー……」
ブチッと切れた音の次にはツーツーという発信音が機械的に響く。
「くっそーー、切ってやがる!」
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