絵の搬出を前に、悠は画材と僅かな衣類が詰まったリュック一つを手に藤堂の部屋から姿を消した。
「どういうことです?」
美保子に連絡をもらって駆けつけた藤堂は、つい声高に問いただした。
席を外した隙に、ギャラリーの使用料四十万と藤堂宛にメモを残して悠がいなくなったのだという。
『残った絵は処分してください。お世話になりました』
たったそれだけの走り書きを読んだ藤堂はすぐさまオフィスを飛び出し、とにかく車を走らせた。
車の中から高津に連絡を取ってみるが、悠は大学にも来ていないという。
「どこか心当たりはないか?」
『んなもん、わかるかよ!』
悠が絵と金を残していなくなった旨を説明すると高津は怒鳴り返した。
『あんた、何やったんだ? 悠が飛び出すようなこと、何かしたんじゃねーだろうな?』
そう言われると、藤堂はぐうの音も出ない。
夜が明けて、腕の中で眠るあどけない悠の寝顔を見た藤堂は、自分がとんでもない大罪を犯したような気がして、血の気が引いた。
可愛い、大切な愛しい者をめちゃくちゃにしてしまったのだと。
黙って部屋を出てしまったのもそんな罪悪感に打ちのめされたからだ。
『昔住んでたって、江ノ島とか……』
ふうー、というため息のあとに、高津はポツリと言った。
藤堂はハッとする。
そうだ、海か!
二四六から環八を抜け、第三京浜を車で突っ走る。
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