サンタもたまには恋をする 68

back  next  top  Novels


 振り返ると、こちらに向かって駆け下りてくる長身の男が見えた。
驚いた悠は途端、駆け出した。
全速力で走ったなんて、いったいいつ以来だろう。
 藤堂は必死で悠を追いかけた。
「……待てって言ってるだろ! 悠!! 一体全体どういうことなのか、説明しろ!」
 怒ったことなんかなかった藤堂が、怒っている。
ようやく悠は立ち止まって振り返った。
「ちゃんとギャラリー借りた金は置いてきただろ! 今更何の用だよ!」
「絵が売れたら、ギャラリーが四〇パーセントをもらう。そういう契約だったはずだ。絵が売れたんだからお前が支払う必要はないし、俺が買ったのは一枚だけだ」
「処分してくれって言った!」
「置いていくなら、それの代金も支払う。第一俺はまだお前に渡してないだろ。なのに何で勝手に行方をくらましたりするんだ!!」
「そんなもの………いらない! いらない! いらないっ!!」
「……悠……」
 藤堂はため息をつく。
「悪かったよ。酔ったお前に手を出したことを怒っているんなら………、当然だ。謝っても許してくれないかもしれないが………」
「うるさい! 謝ったりすんな!! ちょっとした遊びだろーが! お互い」
 さっきまでは慰めでも嬉しかったなんて思っていたのに、本人を前にしたら悪態しか出てこない。
 悠は藤堂に背を向けて、また歩き出した。
「だから……ちょっと待てよ、悠」
「とっとと帰れ! もう二度とあんたの面なんか見たかないんだよ!」

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ