サンタもたまには恋をする 8

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「お客様、どういうご用件でしょうか? あいにく社長はただ今留守にしておりますが、ご用件でしたら私、藤堂が承ります」
 そこへ割って入った藤堂は、すかさず名刺を差し出した。
「ギャラリー銀河プロデューサー、藤堂義行?」
 名刺を読みあげながら顔をあげた男を見て藤堂は驚いた。
「おや、ひょっとして、君は、あの時シュークリームにがっついた…」
 きょとんと、やはり泥で汚れた顔で藤堂を見つめ、男は小首を傾げる。
「あ、もしか、あんときの、おっさん?」
「わざわざあの時のお礼をしにきてくれたのかな?」
 どうやら思った以上に若いようだ。
 ガテンボーイ、何だか面白い偶然じゃないか。
「あんたが誰かも知らないのに、んなこたあるわけないだろ! 俺はギャラリー貸してもらいにきた客なんだぞ。十二月って、ここ空いてるんだろ?」
 どこかで会ったような気がしたのは、そうか、キャンキャンとお散歩をせがんでいる時のアイちゃんとこのガテンボーイ、くりっとした目が似ているんだ。
 よく見れば幼ささえ窺える、ガテンバイトを生業にしているわりに泥を落とせばおそらく肌は白いのだろう。
「だって藤堂さん、ギャラリー使用料負けろっていうんです、その人!」
 啓子が我慢がならないというように藤堂に告げる。
「荒木くん、昨日いただいたお饅頭があったよね?」
「えー、でも、藤堂さん」
 不満げな顔のまま啓子はキッチンに消える。
「君のお腹がさっきから何か食べさせろと言ってるようだ。また食べてないのか?」
 さっきからグーグー鳴っているのは、この男の腹の虫らしい。
「余計なお世話だ! ……けど、まあどうしてもというなら食べてやってもいい」
 啓子がお茶と饅頭を並べた菓子器をテーブルに置くと、不遜なそぶりで男はソファに腰をおろした。

 


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