サンタもたまには恋をする 9

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「どうぞ、召し上がれ」
 藤堂がにこやかにすすめると、男は申し訳程度に手のひらをシャツで拭い、饅頭に手を伸ばした。
「さて、そろそろ本題に入ろうか。まず、君の名前を聞いていなかったね。十二月にギャラリーを借りたいということだが、君が個展を開くのかな?」
 男が大きな饅頭を三つ平らげ、最後の一口を喉につまらせてお茶をゴクゴク飲み干したところで、向かいに座っていた藤堂は切り出した。
「俺は五十嵐悠。俺が個展やるんだ。前に、先輩がここでやった時、割と気に入ってたんだよ、ここ。外からも見えるし」
 五十嵐悠と名乗った男は完結明瞭に答えた。
「なるほど。君は美大生かな? シャツの絵具から察するに作品は油?」
「そうだ。十二月の第一週なんて、借り手が少ないから空いてるんだろ? だったら、少しくらいまけてくれって言ってるんだ、俺は」
「半額にしろって言うんですよ、この人。前金なしの後払いで。それも三階と四階、二フロアセットで」
 あくまでも横柄なその態度に、啓子がすかさず口を挟む。
「二フロアで? 一フロアだけなら、条件によっては考えてあげてもいいが」
「でかいの並べるんだから、一フロアで足りるわけないだろ」
 当然のことのように悠は主張する。
「こちらもボランティアでやってるわけではないからね。五十嵐くん、このスペースで二フロア四十万というのは、良心的な方だと思うが」
 藤堂の冷静な言葉に、悠はちっと舌打ちして立ち上がる。
「わーかったよ、邪魔したな」
「まあ…………、企画という手もある」
 悠は立ち止まった。
「その場合、作品が売れたらその四〇パーセントをギャラリーに入れてもらうことになっている。ただし、売れなかったら規定どおり使用料は全額支払ってもらうことになるが」
 悠は仁王立ちになって、藤堂を見下ろした。
「……売れたら? ま、いっか、じゃあ、その条件ならやらせてくれるんだな?」
 藤堂はじっと悠を見つめてほくそえむ。

 


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