良太がリビングに戻ると、鍋も終盤に差し掛かり、京助や公一がデザートをトレーに乗せて運んできて、カウンターバーの前のテーブルに置いた。
ほとんどが参加者の差し入れだが、良太はパンナコッタのグラスを見つけて早速手に取った。
以前藤堂がオフィスに持って来てくれたパンナコッタの美味さが病みつきになる部類のものだった。
「ねえねえ、良太ちゃん」
振り返ると理香がいた。
「宇都宮氏って今誰かいるの?」
「は?」
良太はきょとんとした顔で理香を見た。
「やあね、わかるでしょ? 今、彼ってフリー?」
なるほど、と良太は頷いた。
「多分、フリー、だと思いますけど、プライベートは俺にもわかりませんよ?」
「だって彼、あんなに気さくで素敵な人だったなんて、知らなかったわよ」
「あ、でもほら、いつだったか、若い女優さんと付き合ってましたよね」
ここで宇都宮をバーゲンセールのように安請け合いして理香に勧めるわけにもいかない。
「あら、そうだった?」
去年の夏あたりは工藤が素敵だとか言っていた理香が、工藤から別の人間に興味を移してくれることは有難いのだが。
「小笠原くんは美亜とラブラブみたいだし、沢村選手は佐々木さんにゾッコンでしょ?」
確かに、たまに良太をからかう以外最初から小笠原は美亜と二人の世界を展開しているし、沢村と佐々木のことは昨年合宿に参加していた者は強引に知らされた感がある。
「理香さん、そう言えば去年はたくさん取り巻き引き連れてたじゃないですか」
「あれはただの取り巻き。そろそろお遊びとはバイバイしたいし」
理香は五所乃尾流華道家元の娘で、次期家元と目される兄とはまた違った世界感で生け花アーティストとして世界的に認められつつある。
京助と同年配で、昔は京助とゴシップ記事によく取り上げられていたらしいが、アメリカ人と一度結婚し、数年で別れてからは華道に邁進している、わけでもなく、セレブの間では恋多き女として知られているらしい。
工藤が進めているこれからの日本文化を担う者、というテーマで若いアーティストや職人にスポットを当てたドキュメンタリー番組にも出演予定だ。
美人だがアクが強くて毒も吐く。
「理香さん、世界を股にかけて活躍するアーティストだし、それこそいろんな人がいそうなのに」
「そうなんだけど、前のハズで懲りちゃったから。やっぱ文化が違うとなかなかうまくいかないっていうか」
アラフォー美人の悩みは大きいようだ。
「それに、いいなって思うと誰かいたりで。研二くんとかもさ、離婚してまで千雪ちゃんがいいなんてね~、人のもんなのに」
カクテルを飲みながら、理香はため息をつく。
「さあ、どうなんでしょう。千雪さんや研二さん、辻さんと三田村さん、それに恵美さんは高校の同級生で結束が固いみたいだし」
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