花さそう16

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「そうなのよね~、フフ、昔、克也が千雪ちゃんにコテンパンにやられた事件って知ってる?」
「え、何ですか、それ」
 理香の話にちょっと興味を持った良太が聞き返したその時、理香の背後から「古い話を坊やに聞かせて取り入ろうなんざ、お前もやきがまわったな」と茶化した声で速水が現れた。
「お二人ってお似合いだと思ってたんですけど」
 宇都宮の話題に戻らないようにと良太は言ってみた。
 すると理香と速水はお互い顔を見合わせて吹き出した。
「やめてよ。お互い黒歴史まで知ってる仲よ? 今さら付き合うとかあり得ないわよ」
「こっちこそだ」
「はあ、そうなんですか」
 そう言えばカクテルなんて誰が作ったんだろうとバーカウンターを見ると、中でバーテンダーよろしくシェイカーを振っているのは藤堂だった。
「藤堂さんって多才だよな」
 呟く良太の前でアスカが「ねえ、藤堂さんミモザ作って?」とねだった。
「畏まりました」
 藤堂は機嫌よく引き受けると、グラスにシャンパンとオレンジジュースを入れてかき混ぜた。
「私にもお願いできます?」
 恵美がやってくると、「あたしにもお願い!」直子や彩佳も続いた。
「藤堂さん、人気者ですね~」
 傍らでコニャックを口にしていた秋山が笑った。
 テーブルの上の鍋は京助や公一、それに近くの者たちが手伝って徐々に片づけられ、今度はデザートや飲み物を持ってみんなが座っている。
 その横にいる工藤は先ほど手酌でバカルディのボトルからグラスに注いだばかりだ。
「あいつ、まだ食うのか?」
 眉根を寄せる工藤の視線の先では牧と良太がチョコレートケーキやブルーベリータルトに取り掛かっている。
「これ、うんま!」
 良太の横ではショートケーキをパクパクやっている森村が感嘆の声を上げた。
「日本ってホント、ケーキとか美味いですよね。ニューヨークとかじゃ、ただ甘いばっかのバタークリームケーキですよ、庶民は。ホームパーティなんか行くと、絶対そこのママの手作りケーキが出るじゃないですか。それがまた甘いのなんの、こんな微妙な風味とかぜんっぜん!」
 森村は力説しながら軽くショートケーキを平らげた。
「え、俺んちも母さんの手作りだったけど、誕生日のケーキとか、美味かったぞ?」
 良太が反論するでもなく言った。
「良太は幸せな子供時代送ってきたのよね~」
 二人の会話を聞いていたアスカが口を挟む。
「ってか、今も仲良し一家だもんね~」
「良太さん、東京出身なんですか?」
 コーヒーを飲みながら牧が聞いた。
「俺? 川崎。牧さんは新潟でしたっけ?」
「はい。大学から東京出たんですけど、在学中は芝居にはまって、ろくろく学業もせずに卒業した次第で」
 大きな体を縮こめるように牧は情けなさそうな顔をした。
「あ、それ、俺も在学中野球しかやってなくて、よく卒業できたなあって」
 あっけらかんと語る良太の話を聞きつけて、「ったく法学部なんか出て、弁護士くらいなってろよ!」と向こうのテーブルから沢村が茶々を入れる。


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