花さそう17

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「うっさいぞ、沢村!」
 良太は振り返りもせずに言い返す。
「お二人、ほんと仲いいんですね」
 笑う牧に、「どこが。犬猿の仲だろ」と良太は反論する。
「そろそろ風呂、行きませんか?」
 あいつは相変わらずどこでも馴染むやつだ、とそんな良太のようすをみていた工藤を秋山が誘った。
 腕時計は十時半を指していた。
「いいのか、片付けとか」
「風呂掃除やったから、工藤さんはいいんですよ」
「じゃあ、行くとするか」
 工藤らが風呂に出向くと、既に一番乗りがいた。
「おー工藤さん!」
「ええ湯でっせ!」
 辻や三田村、研二が湯船の中から声を掛けた。
 中央の柱から温泉が流れ込んでいる。
「今の当主の前の人が戦後すぐに温泉引いたらしいですわ」
 工藤と秋山が湯船につかると、三田村が偉そうに説明した。
「ほう?」
「工藤さん、近くに別荘持ってはりますやろ? そういう噂とか聞かはりませんでした?」
「さあな、ガキの頃は温泉なんざ興味がなかったからな」
 三田村に聞かれて工藤は率直に答えた。
「いいですね~、温泉にこうやってのんびり浸かってられるって」
 工藤と並んで秋山がしみじみと言った。
「お前の郷里も近いんだろ?」
「まあ。でももう家とはきっぱり縁を切ったんで」
 工藤の問いにいっそ清々しく秋山は答える。
「親はそうでも兄弟とかはどうなんだ?」
「そうですね、兄とは一切ないですが、妹が時々連絡をくれます」
「逢ったりしないのか?」
「うちは田舎でも旧家で、街に影響力があるんで、下手なことをするといられなくなりますからね、危ないことはしないでしょう」
「お前に掛けられた嫌疑がぬれぎぬだったことは証明されたんだろうが」
「でもかけられたこと自体が父親は気に入らないんです。しかもお陰で結婚寸前で破棄されてますからね、顔に泥を塗ったというわけです」
 工藤はフンと鼻で笑う。
「田舎にはそういう時代錯誤の家長制度がのさばっているからな。平等もクソもない」
「俺はお陰で視界がすっきりしてよかったと思ってます。その程度の人間だったってことがわかって。会社の連中も婚約者だった人も」
 秋山はぐんと足を延ばして笑った。
「それに、今の仕事も面白いし、給料的にも前の会社の倍はいただいてますから、不満なんか言ったらバチが当たるでしょ? しいて言えば、結婚前提で買った今のマンションが広すぎるってくらいですかね」
「現実に結婚とか、考えてないのか?」
 問われて秋山はうーんと少し考え込んだ。
「家族を持つことを全く考えないわけじゃないですが、現実問題相手がいないし、あえて見つけようともしていないんで、その時はその時ですかね」
「仕事はどうだ? このまま雇われ社員でいいのか?」
「ええ? 工藤さん、俺に出ていけとか言わないですよね?」
 秋山は苦笑いして抗議する。

 


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