花さそう18

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「最初はいずれ会社はお前に任せればいいかと思っていた。無論お前が望めばだが。しかし、アスカの操縦はお前じゃないとダメだろう。独立という手もある。バックアップは惜しまないぞ」
 すると秋山はややあって神妙に答えた。
「ありがとうございます。その言葉を疑いませんよ。独立した小野さんも未だもって工藤ファミリーだし。でも………」
 秋山は言葉を切って顔をばしゃっと洗う。
「俺にとって今の会社が家族みたいなもんなんですよ。変化を恐れているわけではないんですが、しばらくは良太ちゃんとか鈴木さんとかと一緒に仕事をして行ければと思っています」
「そうか。まあ、判断はお前に任せる。俺にとってもお前は会社の要だからな。出ていかれると困る」
「ありがとうございます」
 つい、工藤がそんな話になったのも、検診で引っ掛かり再検査となって、工藤の意識を再構築するようなことが一気に起こったからだ。
 さかのぼれば年明けすぐの恩師の訃報も要因だ。
 極めつけは良太に泣かれたことだろう。
「何だって、急にそんなこと? 確かに工藤さん周辺がうるさいし、工藤さんを狙う輩もいるようですけど、今に始まったことじゃないでしょう? それこそ去年の秋、濡れ衣で容疑者にされたことが原因ですか?」
 ストレートに尋ねられて、工藤はフッと笑う。
「いや、こないだ、毎年検診を受けろと煩い悪友の医者から再検査の通達があったんだ」
「え? それで?」
 秋山は工藤の顔を覗き込んだ。
「結果は何とかセーフだったんだが、良太に泣かれた」
 はあっと、秋山は安堵の溜息をついた。
「まあ、今時、病気だ何だとは共存していく時代ですからね、驚くことはないですが、良太ちゃんのことはちゃんと考えてやった方がいいですよ」
「だからこうして、少しなりとも休みを取ったろうが」
 苦笑いして工藤は腕や脚を伸ばす。
「うーん、確かにいい湯だ」
 この合宿に参加したきっかけは口にしなかったが。
 宇都宮も参加すると知ってつい、とか。
 それにこの休みの間に進行しているだろうミッションもある。
 良太が知ったら怒りまくるかもな。
 フンと工藤は一人鼻で笑った。
 その時、ガラス戸の向こうがざわめいて、やがて数人が風呂へ入ってきた。
「おお、ホンモノの温泉だ」
 嬉し気な声で宇都宮が言った。
「そういや、俺も初めてだ」
 先に沢村がざっとかけ湯をして湯船に入ってきた。
 何せ昨年は夜遅くに現れ、佐々木を拉致って自分の別荘に連れて行ってしまい、結局この屋敷に泊らなかった。
「お、大将!」
 工藤を見てちょっと会釈した加藤や公一、大が続いて現れ湯船に浸かる。
「どうも。しかししっかりした設備ですね」
 湯船に浸かった宇都宮が工藤に声を掛けてきた。
「紫紀さんは何でも徹底してやる主義だからな」
 工藤は答えながら、こいつ、結構身体作っているな。
 おそらくジムにも通っているのだろう。
「だいぶ混んできたな。そろそろ上がるか」
 工藤が身体を起こすと、秋山もそれに従った。

 


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