花さそう19

back  next  top  Novels


「ふぃー、ちょっとのぼせたわ」
 三田村が立ち上がると、研二や辻も「お先に」と声をかけて湯船から上がる。
 工藤と秋山はざっとシャワーで身体を洗い、風呂の引き戸を開けた。
 広い脱衣場には、ロッカーの他、棚には新しいバスタオル、フェイスタオル、それにバスローブが積まれている。
「バスタオルは使ったらそっちの洗濯籠に入れとけばいいんです。バスローブは部屋まで着ていってもいいんですが、朝には洗濯籠に入れてくれって」
 説明書きはちゃんと棚の横に貼ってあるが、秋山が説明した。
 ラタンのベンチ、体重計、大きな洗面台にはドライヤーがいくつか設置され、洗顔用ボトルや化粧水まで置いてある。
 極めつけは炭酸飲料から牛乳まで揃っているドリンクの自販機だ。
 無論、清潔感ある屋敷内は清掃業者がはいるのだろうが、保養所としての機能はしっかり整っている。
 今回は使っていないが、二つの風呂とは別にバリアフリー用の風呂も奥にあった。
「牛乳ってのがいいですよね、工藤さん、コーヒーでいいですか?」
 秋山は自分用に牛乳パック、それに缶コーヒーを買った。
「小銭入れも持って来てないぞ」
「ハハ、俺のおごりです」
 秋山は缶コーヒーを工藤に渡す。
 同級生らは体重計に乗って、「うそ、三キロも増えとる!」「正月グータラしよったな?」「もともと痩せすぎやからええんちゃう?」などとやっている。
 自分の衣類だけを手に二人はバスローブのまま風呂を出て部屋に戻った。
「じゃあ、今夜はゆっくり休んでください。あ、下に行けば、バーカウンターでいつでも飲めますよ」
 そう言うと、秋山は工藤よりいくつか先の部屋へと向かった。
 部屋に戻った工藤はセーターとパンツに着替えてジャケットを羽織ると靴を履いた。
 さっき風呂を掃除する際に着ていたスーツとシャツは、渡さないと良太がうるさいだろうと、まとめておく。
「おっと、換えのスーツ、掛けておかないとな」
 工藤は良太がきっちり入れてくれたスーツバッグからスーツを取り出して、クローゼットに掛けた。
 タイも数本入れてある。
 数年前に良太のものと一緒に買ったスキーウエアも揃っている。
 おおよそ工藤が好みそうなものを選んでいるあたり、良太もよく観察するようになったらしい。
 ドアを開けると、ちょうど良太が階段を上がってきたところだった。
「あ、工藤さん、さっきの汚れたスーツ、出してください。まとめて明日の朝クリーニングに出すそうなんで一緒に出していいって、千雪さんが」
 工藤は部屋に戻ると、さっきまとめたスーツ一式を持って来た。
 良太は手にしていた買い物袋に工藤のスーツを突っ込むと、「下で、ゆっくり飲めますよ」と言いながら工藤と一緒に階段を降りていく。

 


back  next  top  Novels

にほんブログ村 BL・GL・TLブログ BL小説へ
にほんブログ村
いつもありがとうございます