花さそう21

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「どうぞ」
 速水が工藤と良太の前にグラスを置いて向かいに座った。
「ありがとうございます」
 良太はほとんど炭酸かというロンググラスに口をつけた。
 工藤は彩佳を覚えていなかったが、住田という名前に記憶があった。
 三友フィナンシャルの住田か?
 いつの間に良太のやつ、知り会ったんだ?
 三友グループの大河内とは縁戚筋だが。
「でもびっくりしちゃった。沢村くんとあの佐々木さんが知り合いだなんて」
 彩佳の言葉に、良太はちょっと反応する。
 え、これ、ヤバくないか?
 二人のことを知らない彩佳に、わざわざ知らせることではない。
「ええ、うちも関係している仕事で、ずっと一緒だったんですよ」
 すかさず良太はあたりさわりのない説明をした。
「良太ちゃんは沢村とすごい仲いいみたいね?」
 彩佳にまで良太ちゃん呼ばわりされた良太は、一瞬グラスを持つ手が止まったが、ただ回りがそう呼んでいるからってだけでこの人の場合悪気はなさそうだ。
「リトルリーグからのライバルなんです」
「え、野球やってたの?」
「……一応、大学までは。俺、ピッチャーで六大学リーグでは何度か対戦しました」
「すごい! だからずっと仲いいのね!」
「いや、仲いいというか、ライバルです!」
 一応、きっぱりと言い切った。
 隣で工藤がフン、と鼻で笑う。
「ちょっと笑うとこじゃないですよ!」
 すぐに良太はつっかかるが、直子まで顔が笑っている。
「まあ、今は、『パワスポ』とかにもたまに沢村にでてもらったりしてるし………」
「そう、『パワスポ』、理香に聞いてみました。沢村くん出てた!」
 彩佳が言った。
「良太ちゃんがプロデュースしてるんですよ」
 直子が補足した。
「ですってね。すごいわ!」
「あ、いや、プロデューサーの一人ってことで………」
 話題が沢村と佐々木からそれたのはいいが、今度は話が盛りすぎな気がする。
「そうだ、大河内の由樹ちゃん、こないだの初釜で、すっかり工藤さんのファンになったみたいで」
 良太は、ゴクリと飲んだソーダを吹き出しそうになる。
「それはどうも」
 なんつうそっけない返事だ、とは思うものの、良太としてはあまり工藤のファンなど増殖してほしくはない。
「大河内さんとも親しいんですか?」
 良太が聞くと、「親しいっていうか、遠い縁戚?」と彩佳が言った。
「亡くなった大河内のお爺さまの奥様が、私のお爺さまのお姉さまになるのね」
「じゃあ、沢村とも縁戚関係?」
「ええ、ずっと遠いけど。由樹ちゃんとは、子どもの頃からいろいろでよく会ったりしてるから、仲いいのよ。スキーも来たかったみたいだけど、子ども達の行事とかあって残念って。由樹ちゃん、今はほら、私の仕事先の大元の取締役だけどね」
 はあ、セレブってどっかで繋がってたりするんだ。
 良太は妙に感心して聞いていた。
 その時、バタバタと走り込んできたのはアスカだった。
「ちょ、アスカさん、バスローブでウロウロしないでくださいってば!」
 注意したところで、今に始まったことではないのは重々承知だが。

 


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