「おい、良太!」
つい、イラついて工藤は良太を呼びつけた。
「何ですか?」
良太は工藤の苦々しい顔を見て何かあったのかと歩み寄った。
それを見てアスカと直子が肩を竦め、「工藤さんってば、良太と宇都宮さんのことが気が気じゃないのよ」などとこっそり呟いて目配せしたのを誰も気づかない。
「そろそろ平造の食事会だろう?」
携帯を見るといつのまにかもう四時まで間がなかった。
良太はもうレストランに行かなくてはならない。
「そうですね。工藤さんも先に行きますか? 平さんは秋山さんと一緒に後ほど来てもらうことになってるんですが」
「俺はいつでも動けるぞ」
「あ、でも車が……。俺はここからなら歩いて行けばいいかと思ってて」
「上からコートを取ってこよう」
「はい、じゃ、お願いします」
工藤は二階の自分の部屋へ上がって行く。
「えっと皆さん、何だかあっという間に時間が過ぎてしまいました。そろそろお開きと言うことでよろしいですか? まだ見たりないという方はまたご連絡いただければ大丈夫ですよ」
良太が声を上げて皆を促した。
「また機会があったらぜひ。今日はどうもありがとう」
藤堂が言った。
移動し始めた気配にキッチンにいた平造と杉田が出てきた。
みんなが口々に礼を言いつつ、屋敷を出ていく。
「着替えて直行だわ。秋山さーん」
アスカがあたふたと車に向かう。
「じゃあ、俺はアスカさんの用意が出来次第こちらに戻ってくるので」
秋山はそう言うとアスカの後を追った。
食事会に参加する面々も一旦綾小路に戻っていく。
平造と一緒にキッチンに戻った杉田がまた良太のところにやってきて、「あたしは片付け物が済んだらケーキのようすを見に一足先に行くつもりです」とこそっと告げた。
「あ、はい、お願いします」
「エプロン取ったら一張羅のワンピースなのよ」
フフフと杉田が笑う。
杉田はカンパネッラの厨房でケーキを焼かせてもらい、飾りつけもほぼ終わっているらしい。
それにしても女性陣は今のままでも十分きれいなのに、わざわざ着替えてくるという。
「アスカさんも直ちゃんもどれだけドレスアップするつもりだ?」
思わず独り言が出る。
「行くぞ」
ダブルのチェスターコートを着て降りてきた工藤が言った。
良太は手に持っていたステンカラーのカシミアのコートを羽織ると工藤と一緒に屋敷を出た。
良太が持っている中で一番上等のコートだ。
さらに年末に雪で苦労した二人の足元は滑らない靴底のワークブーツである。
「それで、サプライズに何をやるって?」
雪道を並んで歩きながら工藤がまた聞いてきた。
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