花さそう39

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 良太は工藤を振り仰いだ。
「だから、工藤さんも一緒に驚いてくださいよ。時間まであと少しなんですから」
 フン、と工藤は鼻で笑う。
「驚くって言っても、そんな驚くような企画じゃないんですよ。まあ、平さんから以前ちょっと聞いた話を思い出して」
 良太は言った。
「杉田さんが、レストランの厨房で吉川さんの手も借りてバースデイケーキを焼いたんです。平さんの誕生会の話をしたら杉田さん張り切っていろいろ手伝ってくださったんです、個人的に」
「そうか。必然的に杉田さんや鈴木さんの誕生会もやることになるな」
「ですよね。じゃあ、工藤さんの………」
「頼むからやめろ」
 最後まで言わないうちに工藤が話を切った。
 笑いをかみ殺しつつ良太はまた去年の夏を思い出さないではいられない。
 タレントが体調を崩してドラマ進行に穴があき、いきなり工藤がオフになったので、勝手に良太も工藤にスケジュールを合わせさせられて軽井沢に来たのが、ちょうど工藤の誕生日の頃だった。
 良太は夏にはお中元、年末にはお歳暮という名目で、工藤の行きつけのバーにボトルを入れてもらうのが習慣になっているのだが、たまたま平造が人間ドックで留守だった代わりにやってきた杉田が、工藤のバースデイケーキを焼いたのだ。
 どうやら年配の女性には頭が上がらないらしい工藤は、拒否ることもできず、杉田の見ていないところで、自分に割り当てられたケーキを良太によこしたりした。
 いい加減やさぐれてきたアラフォーの工藤に対しての、杉田のぼっちゃん呼ばわりもまた工藤にはどうにかしてくれ、な習性だが、どうやら乳飲み子だった頃から工藤を見てきた杉田にとっては、未だにぼっちゃんなのだ。
 内輪だけならもう諦めてはいるが、さすがに客の前では何とかならないかというところではある。
「お前から杉田さんに言っといてくれ。客の前でぼっちゃんはやめろって」
「はあ、わかりました。………でも、いつものクセでついうっかりってことも……」
「ああ、もう、煩い。何とかしろ」
 工藤は足早にレストランへと向かう。
 良太はクックッと笑った。
 何とかしろったって、一応杉田には伝えるにしても、こればっかりはなあ、と心の中で思う。
「いらっしゃいませ、工藤さんもご一緒ですか?」
 カンパネッラのオーナーシェフ吉川が二人を出迎えた。
「ああ、何かと手持無沙汰なんだ。何でも手伝うぞ」
 良太はそれを聞いてまたふっと笑みを漏らす。
 根っからの仕事人間だからなあ、休めっても椅子にふんぞり返るとか絶対できない人だよな。
「いえいえ、お座りになってお待ちください。今日は助っ人も二人呼んでますし」
 吉川は笑顔で言った。


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