平造にはこの軽井沢で吉川や杉田らとたまに顔を合わせながら野菜作りをしたりして安穏に暮らすのが一番いいのだろう。
工藤は平造の胸中を思いやる。
「平造は自分から何がしたいとか言わないからな。お前でも何か聞いたらまた教えろ」
「……はあ………」
良太は良太で、平造は工藤のことをやはり一番心配しているのではないかと思うのだが。
例の再検査になったことは、結果セーフだったわけだから話すつもりはない。
だが。
「とにかくいろいろ気を付けてくださいよ。工藤さんがどうとか、平さんには話したくないんで」
平造を絡めて良太が文句を言うと途端に工藤は眉を顰める。
「うるさいな。だからこうやって休養にきてるんだろうが」
「はあ」
まあ、ちょっとは考えたってことは認めてやってもいいけどさ。
口には出さなかったが良太はそんなことを思う。
徐々に雪が強くなってきた。
「明日、午後には止むって予報ではいってますけど、平さんたち、無事出発できればいいんですが」
良太はタクシーのフロントガラスに吹き付ける雪を見つめた。
「これは今夜積もりそうですねえ。雪除けがまた大変だ」
タクシーの運転手が言った。
「そうですねえ」
良太は運転手に同意した。
軽井沢に着いた日から雪はたいして降っていなかったが、明日の朝は雪除けから始まりそうだ。
除雪機だけではなく、手作業もいるだろう。
「平さんも除雪機使うと思うけど、俺、心配だから明日の朝、別荘の方行ってみますよ」
「そうだな。またぎっくり腰にでもなったら元も子もない」
工藤も頷いた。
綾小路の門の前に着くと、良太は携帯で既に戻っていた千雪を呼び出した。
「すみません、門開けてください」
すぐに門が開いて玄関の前でタクシーを降りると、既に辺りは一面雪景色になっている。
「お疲れさん」
シルビーと一緒に千雪が二人を出迎えた。
「あした雪除けしないとですね」
「せやな。除雪機が何台かあるし、門から玄関までと駐車場のあたりやな」
「午前中は大雪って予報だし、スキーはムリかなあ」
良太はボソリと言った。
「まあ、でけても午後からやろな」
千雪も窓の外に目をやった。
「あ、お風呂どうぞ。うちにいたみんなは先にもらいましたから」
キッチンから出てきた大が工藤と良太にそう言うと、二階へ上がって行く。
「じゃあ、風呂、行くか」
工藤が良太を見た。
「あ、はい」
良太はたったか階段を上がって行く工藤を追った。
風呂には食事会から戻ってきた佐々木と沢村、藤堂、小笠原が先に入っていた。
「はああああ、極楽極楽う」
湯船に身体を沈めて良太はつい口にした。
「言うことがジジ臭いぞ」
隣に来た工藤が鼻で笑う。
「うっさいです! ジジイじゃなくてもお風呂の常套句です!」
くすくす笑いながら、「戸川さん、今夜は工藤さんの別荘ですか?」と佐々木が聞いた。
「ええ、小学校からの友達っていうから、話もつきないんじゃないですか?」
良太は笑みを浮かべた。
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