花さそう49

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 小笠原と美亜は相変わらず二人の世界で楽し気に微笑み合っている。
 美大仲間以外に対しては割と人見知りだった悠だが、大や公一とは話が合うようだと、藤堂が保護者のように喜んでいた。
 京助と研二はまるでこの合宿の司令官と副司令官のように息が合っていて、良太はちょっと不思議な気がした。
 聞くところによると、研二と京助は千雪を取り合った仲だったはずだけど。
 自分のことには全く頓着しないのだが、みんなのことはいろいろ見えてしまう。
 ハッと我に返った良太は、最近仕事のクセでつい周囲を観察してしまう自分に気づいて、ヤバイヤバイ、と首を横に振った。
 このままだと千雪さんが言うように工藤病になってしまう。
「首の体操でもしてるのか?」
 胡乱な目つきで工藤が聞いた。
「え、ええ、そんなとこです」
 面倒くさいので良太が適当に頷くと、森村がククっと笑った。
 予報によると午後からは雪も止んで太陽も顔を見せるというのだが、窓の外は朔也ほどではないが相変わらず細かい雪がずっと降り続いている。
 こんな時、やることのない人間にとってはただ時間が経つのを待っているだけで何をしようもない。
 千雪は部屋に籠ってペンディングにしていた原稿に向うことにしたようだし、大は仕方なく、棚上げしていたレポートに取り掛かった。
 画家の悠はスケッチブックを取り出してエスキースを描きはじめ、佐々木はモバイルで着想した案に取り掛かり、理香は華道家であることを思い出したように、近くの花屋で花材を仕入れてきて玄関の大きな壺に生け始めた。
 キッチンでは夕食の下拵えを始めた京助の横で、研二は新しい菓子の試作に取り掛かった。
 アスカとセシルと彩佳が何やらフランス語で話していたが、手持無沙汰でコーヒーでも持ってこようと立ち上がった良太は、「ねえ、今のドラマってさ、竹野がどうなるんだっけ」などとアスカに聞かれて寄って行ったところが、多少なりともわからないでもないたどたどしいフランス語を口にした。
「やだ、良太ちゃん、フランス語できるんだ?」
 彩佳の言い方は小さい子に感心したように聞こえないでもないが、「いや、以前、社長に即席で覚えさせられてパリに行かされたことがあって」などと言う良太にセシルも俄然話したがって、フランス語で捲し立てられて、良太は閉口した。
 何にもやることがない大きな男たちはしばらくトランプなどに興じていたが、ババ抜きで負けた辻が立ち上がった。
「クッソ、風呂掃除でもやったろ」
 とたったか風呂に向かう辻の後を追うべく、宇都宮、加藤、三田村らは立ち上がった。
 暖炉に使う薪を取りに行っていた森村と牧、公一は暖炉の前に薪を積み上げていく。
 唯一、恵美が引くピアノだけが安らぎを奏でていたが、そのうち次の演奏会用の演目を何度も繰り返すようになると、いい加減何もしない状況にイラついていた工藤も、他にすることもなく風呂掃除へと向かった。
 良太はあららと工藤を目で追った。
 この休暇では仕事を切り離すと決めているらしい工藤だが、そろそろ限界だろうと良太はちょっと気の毒に思った。

 


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