「あの………怒鳴りつけてた人って、もしか綾小路の………」
「ご存じなんですか? 京助さんです」
「やっぱり。だってこのあたりじゃ有名な一族だし……」
綾小路ってやっぱそんなに知られてるんだ。
良太は見解を新たにした。
「そうなんですか? あ、今、その綾小路さんの別荘にみんなでスキー合宿にお邪魔してるんです」
「え、すご……」
佐藤は思わず両手で口元を覆う。
すごい、と言う程の位置づけなわけだ。
「でも京助さん、あれで面倒見がいい人ですよ」
一応、怒鳴るばかりじゃないとフォローしておくか、と良太は心の中で呟いた。
「じゃ、失礼します」
良太は佐藤に会釈してロッジに向った。
ロッジに入ると、一同近くのテーブルに集まって、秋山は宇都宮らと笑っていた。
秋山と目が合った良太は、「佐藤さん、よかったんですか? 秋山さんのこと気にされてたみたいですが」と聞いた。
「ああ、悪い。良太ちゃんに任せちゃって。高校のクラスメイトなんだけど、地元目線で見てくれるから、つい有耶無耶にしてしまって」
「佐藤さん、秋山さんのこと、前より生き生きしてるみたいって言ってましたよ」
「へえ」
秋山はいつものごとくクールにそう返しただけだった。
あまり自分のことは話さない秋山だが、結構面倒な立場なんだと、良太は心の中で思った。
確か志村も母親が随分前に亡くなったと聞いているが、割と面倒な生い立ちだったらしい。
ほんと、この会社何か訳ありな人が集ってるっていうか。
目の前で大きな口を開けて笑っているアスカは自分の意思で押し掛けたと聞いているが、その前に事務所でゴタゴタがあって千雪と知り会ったのがそもそもの原因だとか。
大体、いいのか、人気女優が笑うのはいいとしても、大口開けてハンバーガーにかぶりつくとか。
途端に良太も腹が減ってきた。
「良太ちゃんの分もちゃんとここにあるよ」
宇都宮が言った。
一つ席を空けて工藤が苦々し気な顔で座っている。
まあ、あれがあの人の顔だし。
「ありがとうございます」
座るなり、良太もハンバーガーにかぶりついた。
「秋山さん、ここ地元なんだ?」
宇都宮が悪気もなく尋ねた。
「ええ。でも、家とは縁を切ってるんで」
サラリと秋山は答えた。
「おやおや。いろいろあるね」
宇都宮は微笑んだ。
この人は場を柔らかくするのがうまい。
「ですね」
秋山も大人な対応だ。
工藤の場合、周りのことを考えていないようで、実は考えてるってことをあまり表に出さないから、誤解されがちだけど。
秋山はそういうとこ分かっていて、工藤についてきてるんだと、良太は思う。
「ああ、みんな、いるう!」
賑やかにやってきたのは、華やかなボーダーウエアの三人組、直子、悠、大だ。
「腹減ったあ」
三人は席を確保すると、じゃんけんで勝った直子が残って大と悠はハンバーガーを買いに行った。
ランチはおにぎりやパスタを食べたのだが、身体を動かすとどうしてもお腹がすく。
「藤堂さん、例によって河崎さんから面倒な仕事を押し付けられて、部屋に缶詰めなんだって」
隣のテーブルに陣取った直子は、近くに座っている良太に可哀そう、と言った。
「浩輔さんも?」
「そう、二人で仕事してる」
「あらら………」
思わず仕事オタクな工藤の反応をチラリと見た良太だが、工藤は秋山と既に仕事の話になっていた。
まあ、仕方ないよな。
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