花さそう58

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「お前、そういう発言、オフレコでもここだけにしとけよ。由々しいと思ったら、最近じゃオフレコ破りで記事にされるぞ」
 良太は沢村を冷ややかに窘めた。
「俺がやめたって誰が困るもんかよ」
 沢村はあくまでもひねくれた言い方をする。
「お前、自分を知らないわけじゃないよな? ちゃんとデータ取ってるんだから。お前のひとことで各球団の戦法に影響があるかもしれないってことだよ。チーム大事にしてるくせに何言ってんだよ」
「へいへい、良太参謀殿、ご指南ありがとうございますだ」
 もちろん本気で言ってるわけではなく、良太にじゃれたいだけなのだろう。
 まあ、こういう場だからこそ、沢村も息抜きができるし、それもこのスキー合宿のいいところではある。
「良太、オバハン呼ばわりはセクハラだから!」
 あらかた佐々木に聞いたのだろうアスカが戻って来ていきなり喚いた。
「だから、オバサンとかってのは言葉のあやで、本人前にして言うつもりはもうとうありませんて。とにかくすごい人なもんだから太刀打ちできないってことで」
 良太は必死で言い訳をする。
「大体そんなこと言ったら、アスカさんだって、工藤さんのことオッサンとかオヤジとか言ってるじゃないですか」
 ムッとした顔で良太は言い返す。
「だーって、工藤さんがそれしきのことでダメージ受けるわけないじゃない」
「そんなことわかりませんよ。密かに傷ついてたりするかもだし」
「やっぱり工藤さんの肩持ってるじゃない」
「いやだから………」
「そういうんはええんやない? ファミリー的な会社やから出てくる言葉って、むしろ愛情を感じるし」
 二人の言い争いをやんわり制して佐々木がほほ笑んだ。
「愛情って……別に俺は………」
 ついそんな言葉に良太は過剰に反応してしまう。
「はいはい、良太に工藤さんを持ち出しても意味ないもんね~愛情が違うから」
「どの愛情が違うんです?」
 ひと風呂浴びてサッパリしたという顔で、秋山が現れた。
「良太の工藤さんへの愛情のことよ」
「ああ、今さらでしょう。それよりアスカさん、さっきハンバーガーぺろりと食べてましたよね? 夕食は控えめにしてください」
「ええ? そんなのムリよ~、楽しみにしてるのに」
「ただでさえ休暇が増えたんですから、腹八分目に、部屋でエクササイズでもやったらどうです?」
「そういうとこ、秋山さん、ケチくさ」
「この場合ケチと言う言葉は全く当てはまらない」
 秋山はさらりと良太の愛情云々を肯定して、アスカと一緒にコーヒーを飲みに行ってしまった。
「秋山さんって、何もかもわかってはる、言う感じやな」
 いつの間にか近くのテーブルに陣取って、タブレットのキーボードを叩いていた千雪が、ボソリと言った。
「そんな感じやね」
 佐々木が千雪の言葉に頷いた。
「秋山さんは会社の要ですからね~」
 ふうと良太は息を吐いた。
「いんじゃね? 会社公認で」
 沢村が軽く言う。
「公認とか何とか、俺は別に……」
 良太がしどろもどろになったところで、「そろそろメシだぞ!」とキッチンから出てきた京助が声を大にして告げた。


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