「千雪さんには相変わらずストーカーだけど」
工藤は「あいつが執着するのは千雪だけだ。他はどうでもいいのさ」と笑う。
「はあ」
確かに京助が千雪を愛しているのだろうことは良太にもわかるし、ストーカーとか背後霊とか言ったりしても茶化してるだけだ。
千雪も何のかの言いながら京助と一緒にいるのだから外野が何をかいわんやだ。
割れ鍋に綴じ蓋ってやつだな。
良太が二杯目の酒を空にしたところで、「帰るぞ」と工藤が立ち上がった。
会社への道を工藤と並んで歩きながら、良太はいい気分でいた。
寒とした夜だが風もさほどなく、ほろ酔い加減で歩くにはちょうどいい。
「お疲れ様です」
警備員に声をかけてから二人はエレベーターに乗り込んだ。
「じゃ、おやすみなさい」
良太は自分の部屋のドアを開けた。
「あとで部屋に来い」
工藤はそう言うと自分の部屋に入って行った。
「はーい」
良太は半分酔った頭で返事をして部屋に入る。
コートを脱いでジャージに着替えると、二つでくっついてペットベッドで眠る猫たちを見て微笑んだ。
可愛いこいつらのお陰で、俺動ける気がする。
良太はへらっと笑い、ドアに向いかけた。
その時また、酔った頭でも何か違和感があった。
振り返った良太は部屋を見回した。
なんだろう?
左側は大きな窓が並び、キャットタワーがあり、キッチンへと繋がっている。
そこから続く壁にはデスクが置かれ、ノートパソコンが置かれている。
視線を右へ向けるとバスルームがあり、それからチェストの置かれた壁へと続き、テレビが掛けられている。
それから平造が選んだのだろう、さっきコートを掛けたアンティーク調のポールハンガーがある。
そこにはやはり平造が掛けたらしいリトグラフがあった。
そこに絵はあったが、壁ではなくドアだった。
「ドアアアアアアア?????」
ようやく違和感に気づいた良太は、ドアのノブに手をかけた。
ノブを回すとドアが開いた。
「何だ、そっちから来たのか」
振り向いた工藤は驚きもせず言った。
「どういうことだよ? これ! 何で、何でドアが!!!!」
あわあわと言葉が続かない良太に、「こないだドアをつけると言ったろう」と工藤は悪びれもせず言った。
「こないだ、って……」
そう言えばスキーに行く前にそんな冗談なやり取りをしたことを良太は思い出した。
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