「ああ、それに元々一続きの部屋だったのを平造に使わせようと二つの部屋に分断した時、もともとそこにあったドアも壁にして塞いだんだ」
結局平造は軽井沢に住み着いたので、ほとんど使わなかったその部屋を今、良太が使っているのだとは、前に平造にも聞いた。
「…や! そういうことじゃないだろ?! スキー合宿の間にこれ、やらせたのかよ?! ネコがいたのに!」
とにかく突っ込みどころがあり過ぎて何から文句をつけたらいいかもわからない。
「ネコは大丈夫だって言ってたくせに!」
でかい音で工事なんかでしたら、ネコたちが怖がったに違いないのに。
「だから鈴木さんが預かってくれてたって言ったろうが」
「預かって…って」
ああ、そういうことか。
ってか、鈴木さんもグルってわけかよ?!
まあ、以前もナータンを預かってもらったこともあったのだが。
「ってか、そもそも何でドアなんか!」
まずそこだろう。
「タオル一枚でドア開けるなんざバカっぽ過ぎるだろうが。第一寒い」
「…そんなのっ!」
言葉にされると良太の方が非常に恥ずかしい。
「グダグダ言ってないで、飲むか? お前も」
ガウンを羽織った工藤は、グラスをもう一つ出して酒を注ぐ。
ムッとした顔のまま良太はドアの方をチラリと見やると、ソファに腰を下ろしてグラスを手に取った。
「俺が部屋でくたばってたりした時も、すぐ来られるし便利じゃないか」
「何、言ってんだよ! 冗談も休み休み言えよな!」
フンっと鼻で笑う工藤を見て、カッとなった良太はまた立ち上がった。
「人間、年を取れば、いつどうなるかなんざわかりゃしないんだし」
事も無げに言うと、工藤は空になったボトルをキッチン横のダストボックスに入れると、リビングボードから新しいバカルディのボトルを取り出した。
「だ…からっ! ちょっとは身体を労われって言ってる……」
一気に感情が昂って涙目になりながら良太は工藤を睨み付けると、グラスの酒を飲み干した。
ボトルを開けて自分のグラスに注ごうとした工藤は、そんな良太に気づいて小さく溜息をつく。
まったくこいつときた日には。
工藤は良太の隣に腰を下ろし、グラスを空けると、「それが現実ってやつだろうが」と良太を見た。
「……嫌だ。そんなの………」
駄々をこねるように良太は首を横に振る。
「ガキか、お前は」
「……そんなの、認めないから」
ポロリと良太の目から涙が零れ落ちる。
肩を抱き寄せようとする工藤の腕を良太は振り解く。
「大体、そんな脅しで勝手にドアなんかつけたことを有耶無耶にしようったって、そうはいかないからな!」
喚きながら良太はまた零れ落ちる涙を拭う。
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