工藤の目に床に落ちる滴が見えた。
こんなことでまた泣いている良太が可愛いと、思う気持ちが胸の中で溢れかえる。
可愛いとかきれいだとか、好きだとか愛してるとか、工藤は今までかつて口にしたことなどなかった。
何かの戒めのように、自分がそう言った言葉を口にしてはいけないのだと。
ちゆきはそんな工藤のことをよくわかっていた。
工藤が言わない代わりに、大好き、愛してる、そう、幾度も幾度もちゆきは言葉をくれた。
ひとみに言わせれば、「あんたは昔話にセンチメンタルしてるだけの情緒欠損症のガキよ」。
フン、ちゆきがいない今、俺のことをよくわかっているのはワンクールで俺を見限ったひとみだろう。
工藤は勝気な大物女優の顔を思い浮かべた。
今ではひとみは、良太のことをちゃんと考えろなどと、工藤のモノを言える希少な一人だ。
良太のことはここのところいつも考えている。
良太に親し気な宇都宮がスキーに行くと聞いたために工藤も一緒に行ったりするくらいに。
まあ、たまには休養をという良太の進言に乗ってみるのもいいかと思ったのだが。
工藤は良太の首筋に手を伸ばした。
ムッとした顔で涙を拭っている良太を引き寄せて唇を塞ぐ。
こんな風につついて苛めるつもりはないのだが、良太は工藤の再検査のことがあってから、やたらとくたばるとかそんな言葉に過敏に反応する。
とっとと俺がこの世におさらばしようが、あとは秋山や良太に任せておけばいいくらいに考えていた俺が、良太を置いて行くことに躊躇するとはな。
そんなことを考えていたのはそこまでだった。
工藤の執拗なキスに喘ぎながら身体が熱を持ち始めた良太からジャージをたったか脱がせにかかる。
さっきの涙とは違う色めいて潤んだ目を覗き込むと、工藤は幾度も唇を啄みながら丹念に首筋から胸へと愛撫を施していく。
良太の弱いところに刺激を与えながら下肢に指を絡ませると、薄い筋肉がついた身体が跳ね、容易くいきついた。
ソファでは窮屈過ぎてイラついた工藤は粗く息を吐く良太を抱えてベッドに運ぶと、裸にした良太をじっくりと追い上げる。
制御能力を失った良太からさらに情を引き摺り出し、零れる意味不明な喘ぎとローションの淫猥な音に呼応した脳内のドーパミンが否が応でも工藤の劣情を駆り立てる。
工藤が大きく動くと、ハアっと激しく身を震わせながら、工藤の背中に良太の指がきつく食い込んだ。
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