遠くでドアの音がした時、目を閉じたまま良太の頭は半分だけ起きていた。
もう起きなければならない気がしたが、目覚ましが鳴らない。
いつものけたたましい音がまだ聞こえない。
聞こえるまでもう少し寝ていたい。
何だか身体じゅうがどんより重い。
あれ、ひょっとして目覚ましかけ忘れたかも。
ぼんやりと目を開けたが、いつもと天井が違うような気がする。
ぼおっとして三十秒。
はたと身体を起こすと、ようやく部屋が違うことに気づいた。
はあっと、大きく溜息をつく。
その間に、まるでドラえもんのどこでもドアを開いたかのように、自分の部屋から工藤の部屋にやってきたことまでを思い出した。
ついでに酒を飲んで喚いたことも。
その後は。
考えるのをやめた良太は、ベッドを降りてソファの上にあったジャージを着ると、またどこでもドアのノブを回した。
ドアを開けるなり、ナアナアと猫たちが駆け寄ってきた。
とにかくご飯をやってから、良太はバスルームに飛び込んだ。
炬燵の上に置いた携帯を見ると、八時を少し過ぎたところだ。
音が聞こえたから、工藤もバスルームにいるのだろう。
熱いシャワーを浴びながら、ふと身体に散らばる赤い斑点を見た良太はげっと思う。
知らず顔が火照ってしまう。
何だか。
何だか夕べの工藤はメチャしつこくて、しかも。
しかも、うろ覚えだが、良太も追い上げられまくってやたらねだっていたような気がする。
うう、やめれ~!!!
夜のことなんか思い返したりするもんじゃないって。
良太はシャワーの湯の下で髪の毛を描きまわすように洗った。
髪にドライヤーをざっと当てると、バスルームを出て、チェストからジャージを取り出して着た良太だが、気になってまたバスルームの鏡で首のあたりを見た良太は、また溜息とともに、いつぞや森村が買ってくれたコンシーラーを赤く見えるところに塗り込んだ。
時刻は八時半。
冷蔵庫を覗いた良太は、卵とベーコンを取り出すと、コンロの上にフライパンを乗せ、バターを溶かして卵を割った。
その横にベーコンを入れる。
蓋をしてから冷凍庫から食パンを取り出すと、ラップを剥がしてオーブントースターに放り込む。
焼いている間に、冷凍ブロッコリーを取り出してキッチンペーパーでくるみ、器に入れてラップをかけると電子レンジに入れる。
これは研二が教えてくれた簡単レシピだ。
それからコーヒーをセットする。
炬燵の上に、二人分の朝食を用意すると、良太はどこでもドアを思い切り開けた。
タオルを腰に巻いた工藤が良太を見た。
「ドア勝手につけた代わりに、朝飯、食えよな!」
良太は声を大にして言った。
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