花さそう70

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 遠くでドアの音がした時、目を閉じたまま良太の頭は半分だけ起きていた。
 もう起きなければならない気がしたが、目覚ましが鳴らない。
 いつものけたたましい音がまだ聞こえない。
 聞こえるまでもう少し寝ていたい。
 何だか身体じゅうがどんより重い。
 あれ、ひょっとして目覚ましかけ忘れたかも。
 ぼんやりと目を開けたが、いつもと天井が違うような気がする。
 ぼおっとして三十秒。
 はたと身体を起こすと、ようやく部屋が違うことに気づいた。
 はあっと、大きく溜息をつく。
 その間に、まるでドラえもんのどこでもドアを開いたかのように、自分の部屋から工藤の部屋にやってきたことまでを思い出した。
 ついでに酒を飲んで喚いたことも。
 その後は。
 考えるのをやめた良太は、ベッドを降りてソファの上にあったジャージを着ると、またどこでもドアのノブを回した。
 ドアを開けるなり、ナアナアと猫たちが駆け寄ってきた。
 とにかくご飯をやってから、良太はバスルームに飛び込んだ。
 炬燵の上に置いた携帯を見ると、八時を少し過ぎたところだ。
 音が聞こえたから、工藤もバスルームにいるのだろう。
 熱いシャワーを浴びながら、ふと身体に散らばる赤い斑点を見た良太はげっと思う。
 知らず顔が火照ってしまう。
 何だか。
 何だか夕べの工藤はメチャしつこくて、しかも。
 しかも、うろ覚えだが、良太も追い上げられまくってやたらねだっていたような気がする。
 うう、やめれ~!!! 
夜のことなんか思い返したりするもんじゃないって。
 良太はシャワーの湯の下で髪の毛を描きまわすように洗った。
 髪にドライヤーをざっと当てると、バスルームを出て、チェストからジャージを取り出して着た良太だが、気になってまたバスルームの鏡で首のあたりを見た良太は、また溜息とともに、いつぞや森村が買ってくれたコンシーラーを赤く見えるところに塗り込んだ。
 時刻は八時半。
 冷蔵庫を覗いた良太は、卵とベーコンを取り出すと、コンロの上にフライパンを乗せ、バターを溶かして卵を割った。
 その横にベーコンを入れる。
 蓋をしてから冷凍庫から食パンを取り出すと、ラップを剥がしてオーブントースターに放り込む。
 焼いている間に、冷凍ブロッコリーを取り出してキッチンペーパーでくるみ、器に入れてラップをかけると電子レンジに入れる。
 これは研二が教えてくれた簡単レシピだ。
 それからコーヒーをセットする。
 炬燵の上に、二人分の朝食を用意すると、良太はどこでもドアを思い切り開けた。
 タオルを腰に巻いた工藤が良太を見た。
「ドア勝手につけた代わりに、朝飯、食えよな!」
 良太は声を大にして言った。
 


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