「やから、その名前連呼すんなや! みんなとっくに足洗うて、地道に仕事しとるわ」
「パクられたりしなかったんですか?」
興味津々という顔でさらに森村が辻に質問する。
「まあ、勝手に他の団体と大立ち回りやりよったやつらが何人かな。それ以外はサツに踏み込まれる前にうまく躱しよったからな」
サラッと辻は答えた。
「そういうところは抜け目がないからな、こいつ」
千雪がふふんと笑う。
「でも、そんな大きな集団だと、ヤクザに目、つけられたりしませんでしたか?」
尚も森村が突っ込んで聞いた。
「ああ、声かけられたこともあったで。けど俺ら、今のハングレとかと違て、バイク飛ばすんが目的やったし、喧嘩しよってもヤバイことに手染めたりするつもりはなかったからな。仲間は大事にしたし、やから今のネットワークも成り立っとる」
「なるほど。でも加藤さんらはそのネットワークとは違いますよね?」
頷きながら森村は続けた。
「加藤らは横浜あたりのバイク乗りで、向こうで知り会うた。まあ、お仲間は何となくわかるいうもんや」
ちょうどそこへ撮影陣を一通りまわった良太が戻ってきた。
「皆さん、飲んでます? 何か頼みますか?」
良太がスタッフを呼ぶと、唐揚げ、オムレツ、サラダ、牛筋大根、豆腐の山芋かけ、茄子の煮びたしと皆が口々に言った。
「良太こそ、何か食べや。動き回って何も口に入れとおらんやろ」
千雪が良太を隣に座らせて言った。
「さっき奈々ちゃんとこでゆず大根とかいただきました」
「まあ、飲んでください、良太さん」
森村が良太にグラスを渡して、ノンアルビールを注ぐ。
「お、サンキュ」
「明日はもう東京帰るんでしたっけ?」
「ああ、そう」
ホントは帰りたくないのは山々だが、仕事がドンと待っている。
「今夜はホテルに?」
「いや、千雪さんとこにお世話になることになってる」
「そうなんですか」
森村はちょっと表情を曇らせたが、すぐに「辻さんも?」と聞いた。
「ああ、実家に行ったんやけど、親が何やかやとうるさいよってな、千雪ンとこに」
「なるほど」
少し笑みを浮かべた森村は、そろそろお開きなので日比野のところに戻ると言って立ち上がった。
「森村が目光らせとるし、こんだけ大人数の中で工藤さんも下手に襲われたりはせえへんやろ」
森村が戻って行くと辻がボソリと言った。
「だったらいいんですけど」
良太はそれでも何か嫌な予感を払拭できない。
「俺もいるから、およばずながらモリーに加勢できる」
匠が言うのに、良太は「それは有難いけど、匠が怪我でもしたら冗談じゃないんで、まず自分を第一に考えてほしい」と少しきつい言葉で返す。
「わかってる」
匠は頷いた。
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