周りから良太のことを褒められて、無論工藤としても悪い気はしない。
実際、面接の時からそうだったのだ。
ヤクザの身内だと告げると大抵引き返すものだが、良太だけは留まった。
それを面白いと思って会社に入れたのだが、物怖じしないどころか相手が何であろうと突っ走るところが、工藤は気が気ではない。
力や技があるわけでもなく、負けん気だけではこの先いつまた痛い目に合わないとも限らない。
そこのところをちゃんと把握していればいいのだが。
ともあれ、今は撮影の最終調整にかかっている。
工藤は、スタッフの間を回って声を掛けている良太に気を残しながら、そっちの話題に戻った日比野と浅沼の話に意識を向けた。
「こんなんで、やつら終わりとちゃうよな」
酒を注ぎながらテーブルを回っている良太を見るともなく見ながら、辻がボソリと言った。
いつの間にか匠と森村も千雪と辻の向かいに座って、辻の顔を見た。
「あんなお茶番で終わっとったらヤの名が泣くわ。まあ、手島あたりはあれ以上知恵絞ろうにも使う頭があれへんみたいやけどな」
「手島の上か」
辻は唐揚げを齧り、焼酎の水割りをゴクリと飲む。
「大石の息子の健一郎、メチャ悪知恵を働かす頭は持っとるらしいで」
千雪は焼酎の水割りをやりつつ、キュウリやワカメの酢の物をつつき、ボソリボソリと言葉を交わす。
周りのテーブルは結構酒もまわって声高に笑い合っているくらいで、ここのしんみりとしたテーブルの話など聞こえはしない。
「加藤の話やと小田先生んとこの若いもんも、何日も前からこっち来て調べとるみたいやし」
「ああ、遠野?」
千雪が聞いた。
「あと女の」
「安井さんか、神戸の生れらしいし、多少、地理的にも明るいで」
「ふーん。まあ、とりあえず手島か大石か知らんが、あっちの動き待ちやな」
辻はそう言うとグラスの焼酎を飲み干した。
「すぐに動いてくるやろ。あっちの弁護士が」
千雪が言った。
「……ああ、せやな」
二人の会話を黙って聞いていた森村が、「なんか、警察より情報収集早いですよね」と口を挟む。
「やから、ネットワークや言うたやろ。特にこっちでは」
「関西百鬼夜行連盟やったか?」
口にした千雪がクスリと笑う。
「そのクサい名前を口にすな!」
グラスに氷を入れて焼酎をトプトプと注ぐ辻は苦々しい表情を浮かべた。
「もう十七年も昔の話や」
辻は付け加えて、焼酎を口に持って行く。
「せえけど、えろ大人数やったんやろ? こいつそのアタマやったんや」
「なるほど、その関西百鬼夜行連盟の皆さんのネットワークというわけですか?」
今度は匠がマジメな顔で辻に聞いた。
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