二人はあっけにとられ、言葉も出てこないというようすで、千雪を見た。
「あ、この二人ですわ。お客さんにいちゃもんつけよって」
その時、警官が二人、スタッフとともにやってくるのが見えた。
「何でうちがつかまるん!」
「お前がドジふんだんやろが!」
「よういうわ! あんたがとろいからやろ!」
往生際が悪く喚き散らし、しまいには互いに罵り合う女子社員川岸と茶髪は警官に連行されていった。
「証拠の動画、どないします?」
千雪が警官に尋ねた。
「一応、提出していただけますか?」
「じゃあ、匠のがええやろ」
振り返った警官に言われて、辻が匠を促した。
千雪はくすっと笑う。
「せやな、お前の名前、ここで出すんはちょっとなあ」
千雪はこそっと言った。
「うっせえ。俺には前科はない」
「せや、やるんならうまいことやらんとな。こんな、法律家何人も相手に、ようも虚偽告訴なんてマネしよるわ。なあ、良太」
それを言われると良太は苦笑いしかない。
「からかわないでくださいよ、さっきはただ勢いに任せてはったりかましたけど、俺は法学部通過しただけなんですから」
良太はコソコソと千雪に訴える。
「良太ちゃん、違う良太ちゃんみたい! カッコよかったよ!」
穴があったら入りたい気分の良太だが、奈々が立ち上がって称賛の言葉を良太に浴びせると、周りからも囃し立てる声が上がり拍手が起こる。
「ほんと、頼もしかったよ。良太ちゃんさまさま!」
志村までがそう言って頷いた。
「ハハハ、はったり効きましたね~、どうもどうも」
良太は照れ笑いを浮かべながらぺこぺことみんなに頭を下げる。
「あのバカ」
そんな良太の様子を見ながら工藤がボソリと言った。
「いや、頼もしくなりましたよ~、良太ちゃん。工藤さんも出ていきたいのじっと我慢して正解!」
日比野がトプトプと焼酎を工藤のグラスや自分のグラスに注ぐ。
「そういや、あんときも、ほら、ホテルで駆け出し女優の子がやらかした時も、良太ちゃん迫力だったよな」
浅沼もビールをグイッと飲み干した。
「そうそう! さっきみたいに、いつものほんわかムードがいきなり鬼気迫るって感じで超クールにあの子やり込めてたもんな」
「おだて過ぎるなよ、調子にのるからな」
工藤は一応釘を刺す。
「いやいや、大したもんだって。度胸の良さはさすが工藤さん譲り?」
日比野と浅沼のやり取りに、その時のことを、良太がきっちり収めたのだとやたら褒めちぎる二人の話を聞き流していた工藤は、問題を起こした女優を推薦していた斎藤も、彼女を役から降ろすことを報告に来た良太の、一歩も引かないという姿勢が頼もしいなどと工藤に言っていたことを思い出した。
フン、ちょっとは成長したのか、ガキが。
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