「海老原さんの認識をどうこう言うつもりはありませんが、小笠原が必ずしも色恋が目的で動いているかどうかはわかりませんし、ドラマの撮影中に誤解を招くようなマネをして、制作陣に迷惑をかけるようなことはしないと思います」
良太は言い切ったものの、マスコミというやつは三人でいたって二人で逢ってたような記事をでっち上げることをやる連中もいるわけで、何かしらあった場合はドラマ制作に迷惑にならないような手立てを考えざるを得ない。
「フーン、正論ぶちまけてくれるね」
「へえ、正論だと思われるわけですか?」
鼻で笑う海老原に、つい良太は突っ込みを入れる。
「何、良太ちゃんに言わせると、女でも男でも見境なくやっちまうのが俺の正論だと思ってるとか?」
「違いましたか?」
それ以上言うと引っ込みがつかなくなることもわかっていたが、今夜の良太は喧嘩を売られれば買うどころか、ふっかけてしまいそうにイライラが募っていた。
「悪いがこう見えても見境なく誰でもってわけでもなくてね。一応、俺にも好みってものがあるんだ。例えば、威勢のいい坊やをやり込めてよがらせるとか、結構好きなんだよ」
わざとらしく下卑た言い方でニヤリと笑う海老原は良太に鋭く淫靡な視線を向ける。
思わず知らず、良太が少し身を引いたのは、随分前に良太を脅してきた男と海老原がダブって思い出されたからだ。
昔のことなど意識の外に追いやっていたし、嫌な目に合ったくらいなものだと思っていたが、海老原の視線や言葉で妙にその時の嫌な思いが舞い戻ってきた。
「なるほど、良太ちゃん、男によく言い寄られたりするんだ?」
秋山やアスカまでがそんなようなことを言っていたのを思い出し、良太は目を見開く。
「何、ホントにそうなんだ?」
カマをかけられたのだとはわかったものの、それを良太はすぐに否定できないでいた。
フン、と笑い、海老原は「まあ、お前みたいなやつは、その世界でモテそうってんじゃないが、そんな目で凝視しながら怯んで怖がられると、余計に欲をそそられるってやつ?」などと言う。
その時、海老原の言葉の何かが良太の中で引っ掛かった。
怖がられると余計に………?
よく襲われたりしたのって、何? 俺のせいだったりする?
千雪さんや佐々木さんみたく、美形でも何でもないのに、襲われやすいって、俺、そんな風に見えてる?
そう考えると、妙に符合するような気がしてくる。
そしてさらに絶対行きたくないところに辿り着いてしまう。
もしか、工藤も実は、そう……だったりして?
そう考えると辻褄が合うような気がしてくる。
そうすると工藤と俺との関係は根底から覆る。
俺の一方的な片思いってのは仕方ないにしても、付き合う付き合わない以前の問題じゃん。
良太は身体の芯から凍てつくような思いがした。
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