その夜の撮影は問題なく行われていたが、海老原は悪びれもせず遅くなってから顔を出した。
午前中には久々にオフィスに立ち寄った沢村からCMのロケのようすを聞かされたのだが、沢村がテンションが高かったのはどうやら夜には佐々木と会うからのようだった。
撮影については藤堂からも非常にいい出来だったと、こちらも熱い報告を受けていたので、うまくいくだろうと良太もさほど心配していない。
気分よく良太は午後からの『いまひとたびの』のスタジオに向かい、こちらの撮影も順調で、竹野とは翌々日には一緒に京都に向かうスケジュールを確認したところだった。
調子よく一日が過ぎようとしているところへ、海老原の顔を見た良太は思わず眉間に皴を寄せた。
不快を顕わにするのは避けたいところだったが、腕組みをしたまま良太はついつい海老原を睨み付けていた。
「良太ちゃん、怖い顔してるよ」
宇都宮に言われてようやく良太は肩の力を抜いた。
「はあ、すみません」
「これでここの撮影は終わりだし、やっぱ今度鍋でもしようよ」
宇都宮に心配されているのが重々わかって良太は苦笑いした。
実はこの『ギャット』に着く早々、小笠原に隅の方に連行され、昨夜、丸の内のビルから海老原のベントレーを追ったのだと聞かされて、良太は驚いた。
「え、何だよ、それ」
「だから、夕べお前が海老原と一緒にバーに入ったのが心配だって宇都宮さんから連絡もらってさ」
「宇都宮さんが?」
真中と美亜、それに水谷とお茶していたところで、それを聞いた美亜が心配して、車で丸の内のビルに駆け付けるとちょうどベントレーがビルを出たところだったので、追いかけたのだと、小笠原はかいつまんで話した。
「美亜が、海老原は相手を酔わせて自分の部屋に連れ込むんだとかって言うから、俺ら必死で車、追いかけたんだぜ?」
「はあ?」
よもや自分の知らないところでそんな状況になっていたとは、と良太は脱力した。
「まあ、会社の前でお前降ろしたみてぇだったから、俺らもほっとして、しばらく会社の前に車停めてたんだ」
美亜にまでそんな心配をさせる海老原に、良太はさらに腹を立てていたが、とりあえず『ギャット』の撮影は今日で終わるし、美亜は昨日で終わっていたので、あと良太の仕事としては『ギャット』のオーナーとしての海老原と楢木にきっちり礼を言うだけだ。
「そういえば、お前、美亜さんとはどうなんだよ?」
良太は気になっていたことを聞いてみた。
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