「どうって、まあ、お茶して、連絡先交換? 今はその程度。彼女にホイホイ付き合おうぜみたいなノリで行けるかよ。大体、いっつもあのお目付け役がぴったりくっついてるだろ」
小笠原も真中と一緒に動いていたのであれば、何の問題もないだろうと思いたい。
「今度、保護猫譲渡会の手伝いするってことにはなったんだけど」
「はあ?」
ボソボソと付け加えた小笠原の顔を覗き込んだ良太は、「まあ、いいけどね、マスコミ、気をつけろよ?」と言った。
「わかってるよ。お友達から作戦しかないだろ」
出会いがないと嘆いていた小笠原だ、せっかく美亜とそうやって付き合っていこうと思っているのなら、良太にもそれ以上文句を言う筋合いはない。
真夜中にずれ込んだものの撮影は滞りなく終わり、最後に海老原と楢木にきっちり仕事としての礼を言った良太だが、何となく海老原から昨夜のようなギラついた雰囲気が消えて、向こうも業務上の挨拶をすると、海老原は先に帰って行った。
「やっと終わって、ホッとしたよ」
宇都宮が声をかけてきた。
「お疲れ様でした」
「良太ちゃんこそ、難儀だったね」
「いや、夕べもまたご心配おかけしたみたいで、すみません」
宇都宮はハハハと笑う。
「まあ、魑魅魍魎の世界だからね、いろいろあるよ」
良太も笑う。
「これからスタジオだけじゃなくて、地方ロケもあるし、ムリしない程度に頑張ろうよ」
「はい!」
坂口が飲みに行こうとスタッフを誘っていたので、宇都宮や大御所俳優らも繰り出すということで、良太もついて行くことにしたのだが。
「ったく、このオヤジらのタフさ加減、感服しますよ」
良太はこそっと宇都宮にぼやいた。
「若い連中の方がげっそりしてるよな」
真夜中もやっている居酒屋に繰り出した総勢二十名ほどの面々は、二時間ほど騒ぎ、四時頃には良太もタクシーで会社に戻ってきた。
「ったく、連ちゃんで車置きッパかよ」
猫のご飯と水をやり、シャワーを浴びると、疲れ切ってすぐ眠ってしまった良太は、その夜京都で起きた事件のことはまだ何も知らなかった。
翌朝、九時を回った頃、携帯のコール音に慌てて飛び起きた良太は、まだ覚めやらぬ頭のまま、電話に出た。
「起きたか、良太、敵が動いたで」
千雪の声だった。
「え……?」
「テレビでもやっとるが、手島尚嗣がヤラレよった」
「は?」
ことの重大さに良太の脳が否が応でも覚醒した。
「ヤラレたって、どういう?」
良太はベッドを這い出して、テレビをつけた。
ちょうど朝のワイドショーなどが、その事件を報道していた。
「文字通り、ヤラレたんや。京都のOホテルで夕べ」
千雪の言葉とテレビのレポーターの声が重なった。
「マスコミが知らんことがある」
千雪の声が重さを増した。
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