「ボールペンが落ちとったんや、ダンヒルの」
良太はダンヒルというキーワードが引っ掛かった。
「………ダンヒル? って、手島ってそんな趣味だったんですか?」
ぐっと唾を飲み込んで、良太は尋ねた。
「いや、手島のものやないらしい。指紋の照合についてはまだ情報がないんや」
「その……ボールペンの画像とかなんてないですよね?」
「ちょっと無理言うて、渋谷さん経由で手に入れたから、送るわ」
恐る恐る尋ねた良太の携帯に、すぐに画像が送られた。
「これって」
良太は送られた画像を拡大して、愕然とする。
「良太、覚えがあるんか?」
「………これ、まさか俺のだったりしませんよね」
「え?」
聞き返した千雪の声が良太の妙に耳に響く。
「どういうことや?」
千雪が緊張気味に聞き返す。
「いや、何か、俺のによく似てて」
「良太のボールペンが、何で手島の殺人現場にあるねん?」
怒ったような声で千雪が言った。
「いや、まさか、………だけど、ものすごく飛躍した考えかもだけど、実は以前、電話中にボールペンがないかって工藤に言われて自分の渡して、それっきり工藤が持ってた……かもって」
「何やて?」
「去年の、工藤が冤罪になりかけた事件、つい思い出して、もしかしてまた………」
「ないとは言えんな」
千雪は断言した。
「あ、でも、あのボールペン、数年前、プラグインのクリスマスパーティで、藤堂さんにもらったやつなんです」
「そうなん? まあ、ボールペンの件は工藤さんに確認しとくけど」
「俺も、藤堂さんにちょっと聞いてみます。あれって確か日付とか文字が刻まれてたんですよ、うろ覚えなんですけど」
「わかったらすぐ知らせてくれ」
「はい」
テレビではホテルの部屋の見取り図を画面いっぱいに出して事件の概要をレポーターが説明していた。
バスローブ姿の手島はベッドの上ででうつぶせの状態で、背中にナイフを突き立てられて殺されていたという。
京都府警は被害者が中山組傘下の手島建設社長ということから、抗争に巻き込まれた可能性もあるとして、調べを進めている、という。
「抗争……」
良太は知らず拳を握りしめたまま、画面に見入っていたが、ハッと我に返り、携帯で藤堂を呼び出した。
「え、ボールペン? ダンヒルの? ああ、良太ちゃんにあげたあれね、文字、入れてもらったはずだよ。20xx.12.24/PLUG-INって。イベントに使ったものはほぼ、日付とプラグイン、入れてもらってる。あのボールペンはダンヒルのスタンダードなやつだけど、確か、あの時五本しか文字入れはしていないはずだけど」
藤堂の返事に、良太は一瞬言葉を失った。
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