答えの出ない問答を頭の中で続けていた良太は、携帯のコール音にはっとして、画面を見ると藤堂からだった。
「ダンヒル銀座店の懇意にしているスタッフさんに聞いてみたんだが、京都府警が確かに京都高隅屋のダンヒルに聞きに来たらしい。だが、あのパーティで用意してもらったボールペンじゃなかったみたいだよ」
「え、そうなんですか?」
「いや、ちょっと突っ込んで聞いてみたら、京都大黒に入ってるダンヒルから顧客に配送された三本のうちの一本だったことがわかったらしい。さすがに顧客までは教えてくれないと思ったんだけど、ここだけの話ってことで聞きだしたんだ」
「え、どこだったんです?」
「それが、京都郊外にある介護老人ホームの職員宛だったらしい」
「ええ?」
介護老人ホームって一体どういうことなんだ?
「残念ながらそこまでしか」
「いえ、すごく参考になりました。ってか、工藤のボールペンじゃなかったってことだけで」
心底良太はホッとした。
「うん、また何かわかったら連絡するよ」
「よろしくお願いします」
そうなると、落ちていたボールペンって、一体どういう意味を持ってくるんだ?
良太は首を傾げながら、とりあえずコーヒーを飲み、千雪にラインでボールペンが自分のものではなかったらしいことと連絡した。
「何かわかった?」
休憩に入ったところで、千雪は森村を呼んでこそっと聞いた。
千雪は今日も貴船神社を訪れて、撮影を見学するような顔で、実はあちこちに目を光らせていた。
「それが、上司が二人ほど組織に送り込んでいるんですが、どうもこの事件に関して、妙に規制がかかってるみたいで………」
森村には既に藤堂の情報など良太からのラインを転送していた。
「規制か。要はあれやな。自分とこの組織におる腐ったみかんを公にしとうないいうやつやろ?」
千雪はフン、とせせら笑う。
「まあ、慎重に捜査を進めてるってとこなんでしょうが、一応、その警視庁に潜り込んでる人らの情報やと、怪しい人物が数人いるみたいで」
「絞れとらんのんか」
きつい眼差しをもろに受けた森村は一瞬たじろぐ。
「はあ、千雪さん、けどさすがですね、潜入人員より早く詳細な情報手に入れてる」
「ちょと脅したっただけやし、やっぱ規制かかっとるからか、これ以上はあかん言われてもうた」
「はあ、やっぱり」
森村がしょげた顔をする。
「別ルートで、こいつ怪しいいうヤツが浮かんできよったけどな」
「ほんとですか?」
「もちょい、そいつをマークして、確実なとこを掴みたい」
そう言ってから千雪はまたフッと笑う。
「警察て、マヌケなとこあるからな。人を尾行するプロやいう意識が、よもや自分が尾行されとるとか思わへん」
「はあ…あの、何か掴んだら早い目に知らせてくださいよ」
森村が必死な目で千雪に願い出た。
「わかっとるわ」
千雪は返事をしながら、今度は工藤に目をやった。
さすがに疲れているようだが、この仕事にいわば命かけてます的な意気込みは前にも増している。
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