「何や?」
物思いしていた千雪は顔を上げた。
「なるべく常時動画撮るようにしてたんですけど、さっき何となく見直してたら、これ」
千雪は森村から携帯を受け取って動画を見た。
「ラウンジ?」
画像に映されているのは、数日前、ラウンジで工藤と柏木弁護士が何やら話しているところだった。
「柏木弁護士、例の居酒屋で騒いだ社員の件で工藤さんに会いに来た、いうことやろ」
しばらく見ていると、話している内容はわからないが、柏木弁護士が何か手帳に書こうとして自分のペンが書けないというような状況で、工藤が胸ポケットのペンを柏木に貸している。
「これ借りただけやろ?」
「もちょい先、見ててください」
森村が言うのでしばらく見ていると、柏木がペンを置いた時、袖に引っ掛けて落とした。
それを拾おうとしている柏木がしばし手こずったように見える。
「工藤さんはそんなとこ見てないですよね」
「柏木、ポケットから何か出してまた入れとるな」
残念ながら、テーブル横のグリーンが邪魔して柏木が何をしているかは見えない。
それから柏木は工藤にペンを返している。
「決まり、やな」
千雪はボソリと言った。
「この時以外、工藤さんのペンを取り替えるようなことができたモンはおらんやろ。しかも工藤さんはツユほどもそんなん疑うてない」
「けど、思った通り、柏木さん怪しいですね」
森村は勢い込む。
「せやけど、わざわざ工藤さんのペンをくすねよったくせに、ほんまは手島殺してそれを工藤さんに擦り付けるつもりやったら、工藤さんのペンを置いとくはずやろ?」
森村は千雪の断言的な発言にちょっと慌てる。
「ちょ、じゃ、柏木さんが手島を殺したって言うんですか? 何のために? だってあの人手島側の弁護士でしょ?」
「声を落とせや。あくまでも手島側やろ? 手島の後ろに面倒なヤツがおるやんか」
「ああ、やっぱ柏木さん、手島だけじゃなく大石とも繋がってる? ってか、まさか大石のヤツ柏木さんに殺人とか、いくら何でも、弁護士ですよ?」
森村が怪訝な顔で千雪を見つめた。
「うーん、もちょい、調べんとな。けど、今後柏木弁護士がまた工藤さんに近づいてくるようなことがあるかしれん。工藤さんに忠告した方がええな」
あくまでもクールな表情で千雪は工藤の方に視線を移した。
翌朝、早い時間に、良太は竹野紗英とそのマネージャー佐田とともに、東京駅から新幹線のぞみのグリーン車に乗車した。
監督の山根や撮影クルーも数人、前の席に座っている。
朝食用に用意したサンドイッチとコーヒーを監督やクルー、通路を挟んだ席の竹野ら二人に配って回ると、自分もサンドイッチに取り掛かった。
ボールペンについては藤堂とあれから何度かやり取りをしたものの新しい情報は出てこなかったが、昨日千雪から思わぬ情報を受け取った。
「え、柏木弁護士が? それ、ホントですか?」
先日工藤とラウンジにいた柏木がペンを摺り替えたのだろうと千雪は言った。
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