「まさか………実は、柏木弁護士については藤堂さんが調べてくれて色々聞きました。以前はMBCの顧問弁護士の事務所にいて、その時に工藤さんとは面識があったんだろうって」
「なるほど、そういうわけか」
千雪は頷いた。
ってか、その頃、柏木と関係があったってことだよな。
良太は心の中でそう断言した。
一行がタクシーで貴船神社に着くと、良太は山根監督と竹野、佐田を伴って工藤に挨拶に出向いたものの、工藤はよろしく頼みます、と一言言っただけで、映画の撮影クルーに声を大にして怒鳴っている。
そんな状況なので、『いまひとたびの』組はすぐに神社の奥へと向かう。
良太は後で追いかけると言い残して、千雪を探した。
千雪は森村と一緒に何やら話をしている。
「お疲れ様です」
「あ、良太さん! お疲れっす」
声を掛けた良太に、森村が破顔する。
その時、日比野監督が森村を呼んだ。
「はい、今行きます!」
じゃ、あとで、と良太に言い残して、森村は元気に走っていく。
「でも、何で柏木弁護士が工藤さんを陥れるようなことするんです?」
昨日は忙しくてたいして話ができず、気が急いていた良太は、早速、千雪に疑問をぶつけた。
「そこは調査中やけど」
「あ、でも、落ちてたボールペンは工藤さんのやつじゃなかったわけで、一体どうゆう………もしか、工藤さんのペンを落とすつもりで、間違って別のペンを落としたとか」
良太が首をかしげると、「そらまた、マヌケな殺人犯やな」と千雪が苦笑する。
「ってか、ホントに柏木弁護士が犯人?」
「俺に聞くなや」
「名探偵に聞かないで、誰に聞くんです?」
「俺は千里眼やない」
「断言したじゃないですか」
「柏木が犯人いう想定やないと話が進まんだけや。一応、別の場合も考えとおる」
「工藤さんには、柏木弁護士のこと話したんですか?」
「まあ、もしまた柏木が来よったら、気ぃつけた方がええとは言うた」
良太は眉根を寄せた。
「もし、ホントにあの人が犯人だったら、冗談じゃないですよ」
昔付き合っていた相手に陥れられるとか、ホントに冗談じゃないだろ。
それにもし、工藤が今も柏木弁護士のことを………。
考えたくはなかったが、駐車場でのあの二人のようすでは、工藤は柏木を愛し気に抱いていたとしか思えなかった。
だが、もし、柏木が工藤を陥れるために近づいたのだとしたら、気を許している工藤が危ないのではないか。
ちょうどその時、日比野監督のカット、の声が聞こえた。
緊張していた場面が、一気に緩む。
工藤も日比野と一言二言話すと、腕組みをして一人立っている。
それを見た良太は居ても立っても居られなくなって、工藤に駆け寄った。
「あの、柏木弁護士って、手島建設の弁護士なんですよね? 何かまた、おかしなことに巻き込まれたら……」
「お前は余計なことを考えなくていい。自分の仕事をしろ!」
良太の言葉を途中で遮って、工藤は怒鳴りつけた。
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