春立つ風に176

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 経歴もさることながら、免許、資格欄に並んだ免許や語学の能力を見て、良太は聞かずにいられなかった。
 俺の資格なんか普通運転免許くらいじゃん。
 語学なんてやっつけだし。
「はい、一応向こうで取ってたし、難しい日本語を理解するのにちょっと手間取ったけど」
「何か、うちのバイトなんかじゃなくても、何でもやれそうじゃん」
 それを聞いて、コーヒーとケーキを運んできた鈴木さんが、「あら、めちゃくちゃ頼もしいわね~」と口を挟む。
 鈴木さんとしては何が何でもこの会社に入ってほしいという気合が窺える。
「うーん、でも、バイト、コンビニに面接行ったら、以前外国人雇ったらお金持ち逃げされたから、日本人しか、とか言われました」
「それ、たまたま変なとこ行っちゃったんじゃないか? まあ、うちでの仕事って、はっきり言って何でも屋だけど」
「ADなんか何でもかんでも屋ですから、お茶出しゴミ出し何でも言ってください!」
 ケーキのクリームを頬につけたまま、やる気満々で目を輝かせる森村には、これ以上文句のつけようがない。
「じゃ、都合のいい日から来てもらうってことでいいかな?」
「はい、もう、今からでもOKです!」
 良太は笑った。
「ってか、もう五時過ぎたから、じゃ、明日からってことでお願いします」
「わかりました!」
 森村はそう言うと、立ち上がって深々とお辞儀をする。
「あ、服装、って、スーツとかじゃないとだめですか?」
 問われて良太ははたと悩む。
「ひょっとしたらスポンサーんとこ行ってもらうとかもあるかもだから、スーツ一着オフィスに置いとけば?」
 すると森村は「じゃ、買ってこないと。どこで買えばいいっすかね?」と聞き返す。
「え、スーツとか持ってないか」
「良太ちゃんの貸してあげればどう? 体型似てる感じだし」
 確かに身長などはあまり変わらないが、それこそ筋肉がきっちりついているから、良太に合わせたものでは無理かもしれない。
「いや、モリー、筋肉ついてるから、オーダーじゃないと難しいかも。会社から制服として支給ってことで、近々つくってもらえばいいよ」
 くっそ! こうなったら俺もジムに通って筋肉マンになってやる!
 そしたら工藤にもうガリガリだとか言わせないからな。
 良太は密かに拳を握る。
「そうね。工藤さんに言えば作ってくださるわ」
 鈴木さんも頷いた。
「え、ほんとですか?」
 森村は驚いた顔で二人を見た。
「俺なんかも、スーツの青島とかでズボン二本付いくらとかって吊るしの着てたら、工藤さんが、うちの社員が吊るしなんかやめろとかって、オーダースーツ作ってくれたし」
「へえ、社長、気前いい!」
「その代わり仕事できないと雷落ちるから、覚悟しとけよ」
「はい! 肝に銘じます!」
 森村は威勢よく軍隊式の敬礼をした。
「あ、ここ、海軍じゃないから」
 良太が苦笑すると、鈴木さんもフフフと笑う。
 森村もへへへと笑い、何とも和やかなひとときが過ぎていく。

 


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