春立つ風に189

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 それから藤堂らとともに良太も加わってCFプロジェクト制作工程の打ち合わせを始めると、アスカと秋山は一旦部屋に戻ると言ってオフィスを出た。
 佐々木と沢村はずっと撮影データを見ながら何だかだと言い合っていたが、データを覗いた良太は、「ドキュメンタリーでも面白そうな感じですよね。都市部もアフリカも物語性があって」と私見を口にした。
「おお、なるほど、それ、CMとは別に提案してみるのもいいかもしれないね」
 どのシーンの沢村もアスリートを超えた人間沢村が映し出されている。
 ただし、体躯といい走る速さといい沢村でなければ撮れなかっただろうシーンでもある。
「問題は宮下東洋商事営業第一部本部長ですよね」
 呟いた良太を見て藤堂は笑う。
「ま、宮下本部長を唸らせるようなものに仕上げようよ」
「何だよ、その宮下って」
 沢村が良太に聞いた。
「東洋グループに怖いオバサンいただろ。佐々木さんにいちゃもんつける人だからな」
 良太は眉を顰めて答える。
「ああ? そんなやついたか? 佐々木さんにいちゃもんとか!」
「こらこら良太ちゃん、沢村をたきつけないように。理由もなくいちゃもんつけたりせえへんから」
 つい声が大きくなる沢村を宥めて佐々木は苦笑する。
 へへと笑って良太はスケジュールの確認をする。
 打ち合わせの間に、頼んでいた森村の名刺を業者が持って来てくれたので、早速、名刺交換会となった。
「森村繁久でいいの? 波多野じゃなくて?」
 藤堂が森村に聞いた。
「波多野がそれでいいって言うんで」
「まあ、仕事上だもんな」
「京都じゃ、俺、モリーで通ってましたもん」
「じゃあ、こっちでもモリーだね。よろしく」
 森村とそんなやり取りをして、「じゃあ、後ほど」と三人がオフィスを出て行った。
「三時半か、じゃ、とにかくスーツとかパソコン見に行こうか」
 良太は森村を伴って当初の予定だった森村の買い物を済ませることにした。
「スーツは、俺が作ってもらってるとこで頼むとして、パソコンは渋谷のビッグだな」
 車のエンジンをかけて、良太は言った。
「パソコンから行くか」
 良太は二四六に入って、宮益坂へと向かう。
「いろいろと社外秘があるから、話す時は慎重にって言ったでしょ? 良太さん、面接の時」
 森村が唐突に言った。
「面接って、まあ、そういうこともあるからさ。特にプライバシーとかもオフィスでは割とオープンにしてたりするし」
「もちろんわかってます。あの二人、絶対カップルだってわかりましたもん」
「え?」
 良太は助手席の森村を振り返りそうになって慌てた。
「沢村さんと佐々木さん。オフィスじゃ公認なんですね」
「はあ……」
 溜息もつきたくなる。
 そんなに簡単にわかるものなのか、と良太は改めて思う。
「確かに、沢村、全然隠そう意識ゼロだからな」

 


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