お陰で年末は面倒な小芝居を打つ羽目になったのだが、あの二人、オープンにし過ぎる沢村と人気スラッガーである沢村のためにも世の中には知られないようにしたい佐々木との間で温度差がある。
「まあ、うちのオフィスにいる時くらいは気楽にしてくれていいんだけど」
「日本じゃ、難しいですよね。それにプロ野球の選手なんかだとよけいに。俺、ハイスクールん時から結構友達に男男とか女女とかカップルいたけど、さすがに軍では秘密にしてるってやつらいたりして。でも俺、わかっちゃって、口止めされたり」
なるほどモリーはそういうカップルに免疫があるわけか。
良太は納得する。
「まあ、そういうカップルとかのこともだけど、オフィスじゃ、みんな悩みや本音をぶちまけたりするからな」
「わかりました。聞いてもオフィスの外には漏らさないってことですね」
そういえば、と良太は千雪のことを思い出した。
「千雪さんのことだけど」
「千雪さん、何か問題あり?」
森村は怪訝そうに聞いた。
「あの人も男って驚きますよね。すんごくきれいだし」
「っていうか、小説家だってこと知ってる?」
「はい、人気推理作家ですよね? 俺、まだ日本の小説読みきったことなくて」
「それ、挑戦しよう。俺も、仕事上、能とかシェークスピアとか彫刻家とか、とりあえず手あたり次第親しみ中だから」
「頑張りますっ! まずは千雪さんの小説からいってみよう」
モリーの返事は元気一杯である。
「うん、それと、なんていうか、世の中で知られている小林千雪と本人の人相風体にかなりなギャップがあるから」
「へ、そうなんですか?」
「そうそう。うちのオフィスじゃほんとの千雪さんだけどね」
「はあ」
森村はよく理解できていないようだ。
「あの、小説の著者近影みたいなの見てみればわかると思う」
「わかりました!」
量販店でのPCを選びはすぐに終わり、オフィス用のノートと持ち歩き用のタブレットを購入すると、今度は銀座へと向かう。
「工藤さんの曽祖父が利用してたってオーダーメイドの店なんだよ」
工藤も服飾品はその店かダンヒルのオーダーメイドを利用している。
「やっぱ身体にフィットするし、動きやすくてシルエットもきれいだよね。吊るしだと肩が余っちゃったり、ズボンの長さとか調節難しかったりでさ」
「なるほど~」
あらかじめ電話でお願いしていたので、すぐに採寸してくれて、あとは勧められた生地の中から森村が好きな色を選んで仮縫いの日を決めると、さほど時間もかからずに終わった。
「うーん、五時半か、ちょっと横須賀までは今日はムリだな。車はまたの日にしよう」
「はいっ!」
森村は終始ニコニコと元気よく、この調子だったから、京都でもみんなに可愛がられていたようだ。
back next top Novels
にほんブログ村
いつもありがとうございます
