オフィスに戻ると、良太は使っていた二つ目のデスクを整理して、森村に使わせることにした。
社内の家具はイタリアのメーカーのものでダークアンバーで揃えてあるが、良太のデスクは両袖机で、パソコンを二つ置き、使っていない片袖机をくっつけて書類や資料として購入した書籍などの山をこさえていた。
片付けようと思いつつ、出ずっぱりになることが多いため、ほったらかしになっていたそれらをまず、片付けることから始める必要があった。
「いいですよ、このままで。俺、十分パソコン置けるし」
森村は言うのだが、それでは良太の気が済まない。
「あらあら、それじゃ、良太ちゃん、自分のデスクが使えなくなっちゃうわよ」
森村用の机の上のものをとりあえず自分の机に移動して、机を元の位置に配置し、机をダスタークロスで綺麗に拭いたのだが、それを見て鈴木さんがくすくす笑う。
「今から片付けます」
宣言して、良太は書類と書籍を仕分けして整理を始めた。
森村はノートパソコンを箱から出すと、ちゃっちゃとWIFIに繋ぎ、初期設定をして、すぐに使えるようにした。
タブレットも設定し終えると、「手伝います」と森村が良太が仕分けした本を壁の書棚の開いているところに持って行く。
そうこうしているうちに工藤が戻って来て、「タクシーで行きましょう」とみんなを促した。
工藤と森村と鈴木さんがドアまで行って、往生際も悪く書類の仕分けを続けていた良太を振り返った。
「良太、あとにしろ、行くぞ」
「はい、はい、ちょっと待ってくださいよ」
良太は慌ててパソコンの電源を落とし、リュックを掴むと三人を追った。
『灯』には、オフィスササキの佐々木と直子、沢村、プラグインの藤堂、あとは青山プロダクションの六名というあまりない組み合わせの面々が集った。
たまたま居合わせて、打ち上げと森村の歓迎会という名目をくっつけただけだが、「他のやつらを待っていたらいつまでたっても歓迎会なんかできやしないだろう」と工藤はのたまう。
「では、藤堂さん、佐々木さん、沢村、海外ロケお疲れ様でした! うちに入ってくれた森村くんをよろしくお願いします」
良太の乾杯の音頭で食事会が始まった。
「豪勢だなあ」
しゃぶしゃぶ会席膳を前にまたしても素直な感想を森村は口にする。
パクパクっといくつかの皿を食べ終えると、早速森村はビールを持ってみんなの席を回る。
「じゃあ、京都組はよく知ってるのね。志村さんと小杉さん、奈々ちゃんと谷川さん」
グラスにビールを注ぐ森村に、アスカが聞いた。
「はい」
「じゃああとは、小笠原と真中だけか」
「軽井沢の平造さんもたまにこっちに出てくるから」
アスカの言葉に秋山がつけたした。
「俺がやるから、主役は座ってろよ」
良太は皆にビールを注いで回っていた森村に言った。
「いいんですよ、これも新人の務めって、日比野さんに言われました」
「うわ、日比野さんって結構ジャパニーズオヤジしてる?」
「バーカ、新人はどこでも当然だ」
苦笑する良太に、沢村の容赦ない指導が飛んだ。
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