良太がふと顔を上げると、向かいに座る沢村と目が合った。
あ、このやろ、我関せずみたいな顔しやがって。
「実はお前も知らない派のくせに」
ボソリと良太が口にする。
「るせえな。絵描きの名前なんか知らなくてもボールは打てるし、パソコンは操作できる」
負け惜しみのように言う沢村に、「そうだよな? 初めて意見があったな?」と良太はフンと笑う。
「しかしモディリアーニとは、これはまた驚きの事実ですね。もしや工藤家の別荘は芸術品の宝庫だったり?」
藤堂がかなり真剣みのある顔で工藤に尋ねた。
「じいさん、貿易商かなんかやってたから、自分でも気に入ったものを買っては持ち帰ってたみたいだぞ。以前工藤家の顧問弁護士だった塩谷さんが亡くなる前、リストを俺にくれたが、そのまま小田に渡したから、小田に聞けばわかるだろう。横浜の家を売った時、目ぼしいものは平造が軽井沢の別荘に移したから、倉庫にも何か珍しいものが眠ってるかも知れない」
「それは本当に機会があったら拝見させていただきたいですね。私は画商じゃないので、売買するとかではなく、純粋に拝見したいだけですけど」
藤堂の申し出に、工藤は「かまわない。平造に連絡を取っておくから、時間のある時に行ってみたらいい」とこだわりを見せる様子もない。
待てよ、工藤の曽祖父が買って持って来たものって、かなりな芸術品とかってことだろ?
そうすると、娘の多佳子に買ってきた、例のロケットペンダントってのも、ひょっとしてすごい高級品だったり?
そうだよ、京助さん経由で鑑定してもらおうって言ってて、工藤に見せてからにしようと思って、結局工藤受け取ろうとしないから、俺が預かってまだ京助さんに渡してなかった。
げ、ペンダントについてるあの赤い石とかもホンモノじゃねーの?
うっわー、ちゃんとチェストの引き出しに入れたよな?
「お前はまた百面相して、何を考えてるんだ?」
こういう時に限って、工藤は目ざとく良太のようすに気づくのだ。
「いえ……別に………、ってか、アレ、別荘の食器類とかもまさか骨董品ってか、そうゆうヤツ、とかじゃないですよね?」
良太が思い当たったのは、食器類、グラスを一つ割ったこともある。
「あそこの食器類って、ウエッジウッドとかジノリとかばっかじゃない? アンティークもあったわ。普通に使ってるじゃない。グラスはバカラとかラリックとか、キッチンに伏せてあったわよ」
「え、まさか、そんな高級………」
平造も何も言わなかったし、まさかそんな高級食器だとか、良太は見当もつかなかったから、平造も杉田さんも普通に使っていたし、良太も工藤も普通に。
「そうそう、ベッドルームのランプ、ガレだったわよ、アンティーク、普通に使ってるんだもん」
「ランプ???? ガレ??? アンティーク?」
アスカの発言に、良太はただ単語を羅列した。
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