「京助のとこもマイセンとかあるけど、イベント用? あそこは藤原さんが管理してるし、工藤さんの別荘みたいに、何でもかんでも普通に使ったりしてないわ。そういえばいつも平造さんが花生けるツボも素敵だったけど」
「あれは備前焼きだ。平造があれに生けると花がきれいに見えるとか言ってたぞ」
アスカの指摘に工藤が軽く説明すると、「うーん、あれは備前焼だったのか。きっと名のある陶芸家の作品だろうとは思ったけど」と秋山が唸る。
「でも食器は料理を食うためにあるわけだろ? 使った方が作った人間も喜ぶんじゃね?」
ビールを飲み干した沢村がしれっと言った。
「出たよ、お坊ちゃま発言。どうせ、どんな高級食器で食ってたかなって知らなかったくせに」
良太がフンっと鼻で笑うと、「バットはこだわっても、俺にとっちゃ食器なんか食えたらいいんだよ」とばかりに沢村は応戦する。
「まあ、あれじゃない? 何にこだわりを持つかは人それぞれだしね。茶の湯の世界では優れた焼き物や道具を使って静かに堪能するんだよね? 佐々木さん」
藤堂がもっともらしくまとめる。
「まあ、それもあるかな、茶道は結構ええ銘柄の道具を使こたりしますから。けど、何使うてるかわからへんと茶道にならへんで?」
佐々木は隣の沢村にさり気なく振った。
「だったら、茶道の道具だけは覚える」
沢村は意地になって宣言する。
「沢村っち、棗と茶筅を逆に覚えて、うちの先生に怒られてたもんね」
直子が思い出し笑いしながら言った。
「いくら何でもそれはないだろ? 佐々木先生に弟子入りするとか言ってたくせに?」
良太はここぞとばかりに揶揄する。
「飲むだけで足痺れさせてるやつは黙ってろ」
またしても沢村と良太がキッズ野球ライバル同士に戻ってしょうもない言い合いをしているうちに、秋山がそろそろと、工藤に目で了解を得てお開きを宣言した。
スキー合宿に工藤が来るのなら、ぜひその折にでも工藤家の芸術品を見せていただきたいと藤堂が工藤に申し出た。
「あたしもビュッフェ、見てみたいわ」
アスカはさっきからビュッフェにこだわっている。
「俺がいなくても平造に言っておくから、行ってみればいい」
鈴木さんがここから地下鉄で帰ると言うと、「あ、俺も、同じ路線ですよね?」と森村もごちそうさまでした、と、工藤に頭を下げた。
藤堂と沢村、佐々木と直子は、これから二次会に行くと告げて別れ、秋山はタクシーを停めて、アスカを送って行くと言った。
あれよと言う間に良太は工藤と二人取り残された。
「前田の店にでも寄るか」
工藤が言うと、良太は、はい、と大きく頷いた。
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