『OLD MAN』は工藤の行きつけのこじんまりとしたバーで、オーナー兼バーテンダーの前田とは長い付き合いになる。
ここ数年、良太は工藤の誕生日である八月にはお中元、暮れにはお歳暮と称して工藤のためにこの店にボトルを入れてもらうことにしている。
工藤に連れて来てもらって以来、前田とは顔なじみではあるが、ほんのたまに一人で飲んだりしたこともあるものの、良太としてはまだ行きつけというには役不足だという気がしている。
工藤と一緒にこの店に寄るのは好きだが、工藤にとっても息抜きができる場所であり、それをあまり邪魔したくはない。
まあ、調子に乗って飲んで潰れたことも何回かあるけど。
店の前でタクシーを降りると、工藤について良太も地下への階段を降り、ドアをくぐる。
工藤はバカルディのエイジドラムをロックで、寒がりの良太はいつぞや作ってもらってから冬はホットバタードラムが気に入っていた。
「さっきからお前、何をまた悩んでる?」
工藤に問われて、良太はコクリとグラスの温かい液体を飲み込んだ。
「え、ああ、まあ………その……」
「煮え切らないやつだな」
言いよどんでいる良太に、工藤が問い詰める。
「だから、あの話の流れからすると、例の、俺が預かっているロケットペンダント、あれも結構なシロモノじゃないかって」
「何だ、そんなことか」
工藤はフンとばかりにグラスを傾ける。
「だってあれについてる赤い石、ホンモノのルビーじゃないかと思って、京助さんの知り合いに鑑定してもらおうかと」
「ルビーだろ。じいさん、目が肥えてたからまがい物やイミテーションなんかわざわざ買ったりしない」
サラリと言われて、「え、そんな、ホンモノのルビーとか、俺、預かってるの嫌ですからね」と良太は抗議する。
「部屋に置いてるんだろ? お前の部屋にルビーがあるから盗み出そうなんて考えるようなコソ泥はいやしない」
「え、それは、そうですけどお」
確かにそんなことを考える輩がいるわけはないとは思うのだが。
「俺は庶民なんで、そんな高価なものを預かってると、落ち着いて眠れませんよ」
「フン、猫と一緒に炬燵でガーガー寝てるくせに」
まるで見てきたかのような工藤の言い草に、「ちょ、それとこれとは次元が違いますから」と良太は言い返す。
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