春立つ風に201

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「コーヒー飲む?」
 喉が渇いたことを思い出し、良太は立ち上がりしな、工藤に聞いた。
「ああ」
 やはり工藤は疲れているように見えた。
 年寄りは何日か遅れて疲れが出るって言うしな。
 コーヒーを入れて自分と工藤用のマグカップに注ぎ分けると、一つを炬燵へ持って行った。
「俺、そろそろ風呂入ってきたいんで」
「ああ」
 コーヒーを半分ほど飲むと、良太は炬燵でまったりとしたまま適当に返事をした工藤をチラと見てからバスルームに入った。
 酔いはすっかり醒めていた。
 工藤の言うようにあれやこれや考えごとをしていたので、さほど飲んでもいなかったせいもある。
 シャワーを浴びているうちにバスタブに湯を張ると、良太はゆっくりと身体を沈めた。
 明日は工藤、朝イチでフジタ自動車の東京本社だったよな。
 疲れてても俺が代わりに行くわけにいかないもんな。
 良太も午後二時からパワスポの会議が入っている。
 夕方五時過ぎから『貴様と俺』改め『コリドー通りでよろしく』の撮影で、再度『ギャット』を使うことになっていた。
 当初、居酒屋で殺人事件が起きるという設定になっていたところを、数日前になってから坂口が居酒屋ってのも面白くないから『CAT』すなわち『ギャット』に設定を変更すると言い出し、良太に至急またランドエージェントに許可を取れと言ってきた。
 まあ、設定や場所を変更するなんてことは、坂口にはよくあることだが、また海老原と顔を合わせることになるのだけ良太は避けたかった。
 だが、野口に連絡を入れたところ、海老原はあいにくロスにいるというので、ラッキーと一人頷いた。
 早速ロケに森村を連れていくことにしているが、その前に森村が来たら早速辻の会社に出向いて車を調達しないと。
 いろいろ考え込んでてロケのこともまだ工藤に話していなかった。
 風呂から上がったら話そう、とタオルで頭を拭きながらスエット上下に着替えた良太が炬燵に戻ってみると、工藤は炬燵に足を突っ込んだまま、絨毯の上で寝ていた。
「え、おい、工藤……」
 やっぱり疲れがでたんじゃん。
 起こすよりもと、良太は軽い毛布を持ってきて工藤に掛けた。
「ったく知らないからな、ズボン、毛だらけだぞ」
 猫たちはその向かいの炬燵掛けの上でくっついて眠っている。
 まあ、ここで身体を休められるのならいいんだけどさ。
 良太も眠くなって髪にドライヤーだけ掛けると、ベッドに潜り込んだ。
 寝返りをうった良太が息苦しいと思って目を開けると、いつの間に入ってきたのか工藤の胸に顔が当たった。
 気づかないくらい熟睡していたらしい。
 毛布を被ろうとした時、工藤の腕が良太を引き寄せた。
 


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