春立つ風に214

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「おはようございます。あら、良太ちゃん、風邪?」
 翌朝良太がオフィスのドアを開けるなり、近くにいた鈴木さんが聞いた。
「おはようございます。ちょっと喉がいたいかなと……」
 喉にちょっと違和感があったので、ゼリー飲料で朝食にした後、栄養ドリンクで常備していた風邪薬を飲み、とりあえずマスクをした。
 風呂でちょっと寝てしまったのが悪かったかも知れない。
 夕べというか明け方、風呂から上がってすぐに寝たのだが、髪が生乾きだったし、今朝起きた時、頭がぼんやりしていた。
「おはようございます。あれ、風邪引いた?」
 森村がキッチンから出てきて元気そうな笑顔を見せる。
「うーん、何か喉がいがらっぽくて」
「大丈夫ですか? 良太さん、働きすぎだって、みんな言ってましたよ」
 森村が心配顔でコーヒーを持ってきてくれた。
「あ、ミルク沸かしてカフェオレにしましょうか。その方があったまりそう」
 森村はよく気が付くと、京都の現場でも最初は怒鳴り散らされたが終わる頃にはみんなに可愛がられたと聞いている。
 良太の返事を聞く前に、キッチンに引っ込んだ森村は数分後、カフェオレを手に出てきて、良太のデスクに置いた。
「お、ありがとう」
 森村には頼まれた仕事がない時は何でも自分でやってみてくれと言ってある。
 パソコンに強いようで、会社のサイトのリニューアルも任せてみることになった。
「必要なら社長や良太さんの送り迎えもやりますから、どんどん言ってください」
 運転はスムースだったし、確かに、工藤の送迎時間だけを考えれば、森村に任せて良太は自分の仕事をした方が合理的だ。
 ただ、良太にとっては送迎も、あちこち飛び回っている工藤と一緒にいられる貴重な時間でもあった。
 大抵工藤は電話をしていることが多いが、何だかだと言い争いながらハンドルを握っていたことを良太は思い起こす。
 仕方ないよな。
「わかった。俺はいいけど、社長の送迎は頼むよ」
 時は移り、人も変わり、仕事も変わるのは当然だ。
 だが工藤は、どうやら朝早く出かけたらしい。
 隣のドアが開く音で目が覚めた良太は、目覚ましをスルーしていたことに気づいて、あたふたと起き出したのだ。
 その時電話が鳴った。
「あ、スキー、まだ予定がわからなくて」
 千雪からだった。
「そうだ、モリーとその友達とかもいいですか?」
「ええよ」
「一応、でも、軽く素性は聞いた方がいいですよね? 去年の夏みたいなこともあるし」
「うーん、まあ、その時はその時で対処したらええんちゃう?」
 千雪も京助も、そういうところはアバウトだ。


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