「個人的には俺も平さんや鈴木さんにはお誕生日にプレゼントやカード送ってましたけど、みんなに声をかけましょうか。みんなで一つのプレゼントでもいいし、それぞれにでもいいですけど」
工藤はフンと笑ったが、心の中では良太の提案になるほどなと頷いていた。
これまで一人で動くのが当然と思って生きてきた工藤にとっては、良太はやはり異次元の存在なのかもしれない。
自分ではそんな思い付きは到底出てこない。
「だったらお前が先導してやってくれ」
「わかりました。食事会は杉田さんにお願いするのでもいいし、いっそ、カンパネッラにお願いするのでもいいかも。吉川さんの都合もあるかと思うので、聞いてみますけど」
良太は思いつきをいろいろ口にする。
「それもいいかもな」
「ってか、それより、工藤さんの休み、いつにするんですか? それに合わせますから」
何だかすっかり熱もどこかへ行ってしまったかのように、良太は工藤に詰め寄った。
「ああ、わかったわかった。そうだな、この週末二十七の金曜に夜までに向こうに着けば、土日続けて休みにすればいいだろう。俺は日曜の夜に戻るが、お前は月曜に戻るのでもかまわないし」
すると良太は眉を顰める。
「だったら俺も日曜の夜に戻りますよ」
ムッとした顔のまま良太が言った。
「明日調整してみよう」
苦笑しながら工藤は酒を飲む。
「何なら携帯切っちゃってください。飛び込みの仕事はお断りってことで」
何だか今ならどさくさに紛れてメチャ言いたいこと言ってしまえそうだ。
良太はこっそりそんなことを思うが、考え込んでしまうと口にしない確率が高い。
もちろん、酔った勢いで口走ったことに関してはほぼ良太の記憶にない。
「わかったから、お前は食べたら薬を飲んでゆっくり休め」
良太が完食したおでんの容器を取り上げてキッチンのゴミ箱に捨てると、工藤はマグカップにお湯を持ってきて良太に差し出した。
まだ喉がいがらっぽいのは確かで、良太はサイドテーブルの引き出しから総合感冒薬を取り出して飲んだ。
「あ、こいつらにゴハンやらないと」
起き出そうとした良太の頭をかき混ぜて、「俺がやっとく。お前は寝ろ」と工藤は言った。
「ナニソレ。不気味に優しいじゃん……」
上目遣いに見上げる良太に、「何が不気味だ。俺が優しくなくてどうする」などと工藤はにやにやと口にする。
しばらく工藤が部屋の中で動くのを感じていたが、そのうち薬が効いてきて、良太は眠りに落ちた。
「あ、おはようございます。体調、もう大丈夫ですか?」
翌朝、終業時間十分前に良太がオフィスに降りていくと、既に鈴木さんや森村は自分のデスクでコーヒーを飲んでいた。
「昨日はすみませんでした。ちょっと喉が気になるんでマスクしてますけど、ほぼ大丈夫です」
良太はちょっと頭を下げると自分のデスクに向かう。
工藤は良太が食べると言ったので、今朝もパンのミルク煮を作ってくれた。
あれ、何か病みつきになりそう。
ほんのり甘くしてあるのが食べやすくて、おかゆに梅干しも嫌いではないが、今朝もぺろりと食べてしまった。
でも、珍しく工藤が作ってくれたから、なのかもな。
何となく、そんな気がした。
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