春立つ風に225

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 鈴木さんがコーヒーをカフェオレにして持って来てくれた。
「無理しないのよ?」
「はい、ありがとうございます。あ、そうだ、ちょっと聞いてください」
 良太は早速、昨夜工藤と決めた平造の誕生日について二人に話した。
「ちょっと今からみんなの意見をまとめたり、お金を集めたりってのは難しそうですし、それぞれに何かしらのプレゼントを用意してもらって、それを持って行くってことにしようと思うんです」
「あら、いいわね。プレゼントとお食事会」
 鈴木さんが両手を合わせて賛成した。
「今度の週末なら俺、行けます! 楽しみ!」
 森村が宣言する。
「鈴木さんもご一緒にいかがですか?」
 すると鈴木さんは、「うん、そうねえ、今回はやめておくわ。週末は娘とミュージカルの約束なのよ」と首を傾げ、「でも、プレゼントは用意するわ。何がいいかしら」と楽し気に笑った。
「でも、何、用意したらいいんですかね、俺、会ったことないし」
 森村がうーんと腕組みをする。
「そうだな、平さんって、物知りだし、真面目だし、料理は美味いし、ぱっと見怖そうだけど優しいし、日常は質実剛健って感じのおじさん?」
 良太は頭に浮かんだ平造像を言葉にしてみた。
「しつじつごうけん?」
 森村に聞き返されて、良太は即座に日本語の意味が出てこないのでネットで検索する。
「えっと、飾り気がなく、まじめなこと?」
 背中の倶利伽羅紋々のことは別に話す必要もないだろう。
「ふーん? 料理できるんだ? どんな料理?」
「和食はもちろん、イタリアンとかフレンチとかも、凝り性みたいでさ」
「あ、じゃあ、調理器具とかにしよっかな」
「あら、いいんじゃない?」
 鈴木さんも大きく頷いた。
「その人も社員? ずっと軽井沢にいるの?」
 森村が素朴な疑問を呈した。
「うん。軽井沢の別荘を管理してて、もともと工藤さんの育ての親みたいな人らしいよ」
「そうなんだ。俺にとっての波多野さんみたいな?」
「うーん、モリーと波多野さんがどんな関係を築いてきたのか知らないから何とも言えないけど、血のつながりはなくても親みたいなもんだから、そうなのかもな」
 未だもって良太は波多野とこの人懐こい森村が親子というのが不思議ではあった。
 だが森村の言葉からも、波多野は森村を大切に育ててきたのだろうことはうかがえる。
 ちょっと遅くなったがと、午後には辻が車を届けてくれた。
 肩慣らしに森村運転の車で「今ひとたびの」の撮影が行われるスタジオに向かうことになった。
 その後にはまた宇都宮と小笠原が演ずるバディもののクライムサスペンスドラマ「コリドー通りでよろしく」のロケ地に向かう。
「今日は結構きっついですね。良太さん、平気?」
 ハンドル捌きも快調に運転する森村が心配そうに聞いた。
「ああ、大丈夫」
 撮影陣に風邪を移すわけにはいかないのでマスクはしているが、喉のいがらっぽさがまだちょっと残っているだけで、身体は絶好調まではいかずとも動けている。
 差し入れ用のスイーツや飲み物を途中で車に積んで、世田谷へと車は二四六を走る。
 映画の編集作業に顔を出した後、工藤もスタジオに向かうと今朝は言っていた。
「今ひとたびの」の撮影は、竹野紗英のスケジュールを加味しつつ動いているため、竹野が主演の映画がクランクインするのに合わせてしばらく竹野ナシのカットの撮影以外はできなくなる。

 


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