春立つ風に226

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「竹野さんって、ベテラン女優さんなんですよね?」
「一度京都にも一緒に顔を出しただろ?」
 森村はえっとちょっと驚いた。
「あの時の? だって若い人でしたよね?」
「子役からやってるからベテランなんだよ。演技もしっかりしてるし、自分にも他人にも厳しいから、下手なことやってるとどやしつけられるぞ」
「うわお……」
 良太に脅されて、森村は肩を竦める。
「そうだ、みんなに平さんの誕生日のこと、ラインしてくれたんだよな?」
「ちゃんと、送りました。早速返事きてます」
 良太は会社用のタブレットを森村に預けることにして、社内連絡などは森村の担当になってもらった。
 それだけでも良太の仕事は軽減できる。
 バイトと言う状況だが、森村には徐々に色々覚えてもらえばと、良太は思っている。
「あ、良太、やっときた!」
 スタジオに入るなり、アスカが良太と森村を出迎えた。
「平さんのお誕生日のことはわかったけど、良太も工藤さんもいつ行くのよ? 軽井沢」
「あれ、金曜からって、モリー、日にち入れなかった?」
 良太が聞くと、「あ、しまった、日程入れるの忘れた!」と森村は天を仰いだ。
「追加で送っておきます!」
 森村は慌ててリュックからタブレットを取り出した。
「じゃあ、一緒に行けるね! 竹野がしばらく離れるから週末久々のオフなのよね!」
「ですね」
「月曜日の朝ゆっくり帰ろっと。良太、工藤さんもちゃんと連れてってよ?」
「工藤さん、金曜の夜までには行くって言ってますけど、一緒に行くのは難しいでしょ」
「あら、残念ね、良太」
 余計な一言を残して、メイクさんに呼ばれてアスカはルンルンで戻って行く。
「秋山さんも久々ゆっくりできるんじゃないかな」
 アスカの背中に呟くように、良太は言った。
「あ、そうだ、牧さんに聞いたら、行きたいって」
 森村が言った。
「そっか、彼女と?」
「それがどうも、何か、うまく行ってないみたいで」
「なのにいいのか? 一人で遊びに行っても」
「うん、何かすごい勢いで行くって言ってましたけど」
 森村はそう言ってから、「そうだ、参加費用はいくらですか?」と聞いた。
「ああ、そういえば、参加費用はないんだ、別に。ただ行き帰りは自分持ちで、みんなでお土産とか持って行けばいんじゃないか? 牧さんも一人なら俺、車出すから一緒に行けばいいよ」
「うわ、ぜひ、お願いします!」
 撮影の方は、記者である竹野が容疑者として警察から追及されるという緊張感のあるシーンが続いた。
 ほぼ全シーン竹野が出演することになっているが、こういう時の竹野の研ぎ澄まされたような演技は思わず見入ってしまう。
 アスカも負けじと竹野と丁々発止のやり取りを繰り広げる。
「アスカさんも、いつもとは別人級だもんなあ、撮影中って」
 良太は思わず呟いた。

 

 


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