「あ、ねえ、工藤さんも良太たちと一緒に行けばいいんじゃない?」
そこへ、相手が誰であろうと端から怯むなんて言葉を知らなかったもう一人がつかつかと工藤の元へやってきた。
撮影を離れると、アスカの頭の中はもうスキー合宿に支配されているらしい。
「あたしらも一緒にいけるわよね? だって、平さんのプレゼントも持ってかないとだし、ねえ、あの車で大丈夫? 秋山さん、週末結構雪降るらしいし」
壁にもたれていた秋山は腕組みをほどいて工藤を見た。
「そうですね、いざとなったらスタッドレスにチェーンかな」
「そうだ、真中が行けないから、小笠原、美亜と二人で行くって言ってるよ」
アスカの発言に、「え、そうなんですか?」と良太が割り込んだ。
真中は小笠原のマネージャーだが、予定があればオフまで強要できないだろう。
「水谷さん、オフなのに巻き込むの申し訳ないでしょ」
美亜のマネージャーで常に美亜と行動を共にしている水谷は、動物保護のNPO法人の代表も務めている。
「水谷さんに聞いてみますよ。もしかウインタースポーツとかお好きならご一緒に……」
「でもきっと小笠原さん、美亜さんと二人で行きたいんですよね?」
森村も口を挟む。
「それはそうなんだろうけど、美亜さんを預かってて道中雪道で事故とか、ちょっと怖いし」
「え、そんなデンジャラス?」
森村はちょっと驚いて、良太に聞き返す。
「なんか、楽し気な話題ですね」
山根がみんなの会話を聞いてボソリと工藤に言った。
「週末にスキー行く算段だ」
「おや、青山プロで? そりゃ羨ましいなあ」
コーヒーを飲みながら山根が笑った。
「とにかく、俺、あとで皆さんに確認しますから」
良太が言った。
「そうして。奈々ちゃんの分、預かっていくことになってるし」
アスカはそう言って、メイクさんのところに向った。
「志村さん組もロケで海外だからな」
良太は頭の中で人数を数えた。
平造のための食事会のこともある。
カンパネッラの吉川に聞いたら、そういうことならぜひうちでやらせてほしいと逆に言われたので、早めに人数を知らせなくてはならない。
平造と懇意にしてくれている吉川がオーナーシェフの近くのイタリアンレストラン、カンパネッラは、工藤や良太も馴染みの店で、軽井沢に行ったら一度は立ち寄っている。
「プレゼント、いつ買いに行きます?」
森村に聞かれ、週末のために自分のスケジュールを調整すると、良太にはほとんど時間がないことを再認識する。
「モリー、鈴木さんと明日とか、買い出しに行ってくれるかな。ネットで探してみたけど、実際見て決めたいし」
「Copy!」
森村は威勢よく頷いた。
「それで、工藤さん、金曜は何時に出るかまだわからないんですか?」
良太は工藤に向き直る。
「日比野ら次第だな」
映画の編集に工藤も立ち会うことになっている。
「お前はどうなんだ?」
「パワスポの特番で八木沼選手の撮影が終わり次第です。一応午後五時には終了のはずなんですが」
プロ野球レッドスターズの大型スラッガー八木沼大輔は今年プロ三年目で目覚ましい活躍を見せた。
最新インタビューに八木沼を追った昨春からの映像を加え、各関係者らのメッセージを交えた十五分程度の番組で、三月に行われるWBCやオープン戦を前に放映予定となっている。
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