げ、痴話喧嘩かよ!
良太は関わり合いにならないようにと、飛び交うのが英語なのをいいことに知らん顔でバーテンダーにまた話しかけた。
「落ち着いたいい雰囲気ですね」
「そうですね。お客様の年齢層も価格帯も高めですから」
バーテンダーは淡々と答えた。
音もさほどうるさくなく流れている。
「Cut it out! John」
海老原と青年に、今度は女性が参戦したようだ。
良太がチラッと目をやると、先ほど現れたモデル仲間だろう背の高い青い目の美人だ。
「未練がましいわ。レオは私のハニーなんだから」
「フィオナ、一度寝ただけでハニーはやめろ」
ぎょえ、タラシの常套句。
冗談、修羅場じゃん!
聞きたくなくても聞こえてしまう。
「えと、温かいのお願いできますか」
良太はバーテンダーに向いた。
「畏まりました」
やがて良太の前に、シナモンが添えられたホットカクテルが置かれた。
「美味しいです」
「ベースはダークラムです。お口にあいましたか?」
「はい。ありがとうございます」
その時、ジョンと呼ばれた青年がたったか店から出て行った。
フィオナという女性も海老原から離れて奥にいるモデル仲間のところへ行くのを良太は見た。
顔がかなり怒っているようだ。
「失礼したね、広瀬さん」
海老原がようやく良太に向き直った。
「いえ、少しお話を伺ってました」
良太は知らぬ存ぜぬを決め込んで答えた。
「それで、この店のご感想は?」
「はい、とても落ち着いたいいお店ですね。もし、使わせていただけるのであれば幸いです」
海老原は頷いた。
海老原は頷いた。
「それではあらためて返答しよう。すまないが、明日ニューヨークに発つので私はこの辺で失礼させていただく」
「はい、よろしくお願いします。」
「君はどうぞゆっくり楽しんで」
海老原は良太の肩に手を置いた。
数歩歩きかけて、海老原はまた戻ってきたと思うや、良太の耳元で囁いた。
「なかなかのタヌキだね、君は」
「は?」
良太が振り返ると、海老原はエントランスを足早に出て行くところだった。
何だよ、もったいぶって、工藤が気に入らないらしいことはよくわかったし、ダメならダメって今、言ってくれればいいじゃん。
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