良太は小首を傾げてから、また温かいカクテルに口をつける。
海老原が消え、身体が温まったので良太は少し肩の力を抜いた。
同時に忘れていた疲労感が押し寄せる。
あらためて店内を見回すと、それぞれみんな穏やかに寛いでいる。
オーナーはああでも、店はいい雰囲気だ。
良太はバーテンダーに、ごちそうさまです、と言い、レジに立った。
「お会計は結構です」
財布を取り出した良太にスタッフが言い、コートを着せてくれる。
サービスはきっちりしているし、礼儀正しい。
オーナーはちょっと難ありだけど。
良太がエレベーターを待っていると、秋山が出てきた。
「どうだった? 感触は」
エレベーターに乗ると二人だけだったので、秋山が聞いた。
「いや、店はいい感じですけどね。何か、煙に巻かれているみたいで、あのオーナー」
「ああ、海老原氏ね。よく言えばエピキュリアン、悪く言えば無節操」
良太は苦笑した。
「どっちもたいして意味は変わらないんじゃ」
「おまけにバイだ」
秋山は表情も変えずに言った。
「何か、そうみたいですね。青い目のモデルさんとジョンって若い男とで海老原さんを取り合ってたみたいで。さすがに掴み合いの喧嘩とかにはならなかったけど」
「タラシの極み?」
秋山は今度はくすりと笑う。
「まあ、あんなドイケメンでやり手の実業家とくれば、言い寄る者も多いだろうね」
良太はそれを聞いて首を捻る。
「でも、なんかいけ好かない」
外に出た途端、二人の傍らをビル風が一気に吹き抜けた。
「多分、使用許可くれないかも」
「海老原?」
ボソリと言った良太に秋山が聞いた。
「あの人、昔工藤にダメ出しされたのを根に持ってて」
「はあ? 何だそれ?」
良太は工藤と海老原の因縁を秋山に説明した。
「なんとまあ、起因は工藤さんかよ。しかしあり得ないことじゃないよな」
秋山は頷きながら苦笑した。
「それで何か目論んでるってか? いや、そんな暇はないだろう。彼は忙しそうだし」
「ま、そうですよね。俺ごときいじってもね~」
二人はそれぞれタクシーを停めて家路についた。
十二時になろうという頃、良太の携帯がなった。
「あ、お疲れ様です」
「バーに行ったのか?」
工藤は相変わらず要点だけ聞いてくる。
「はい、店はゆったりしたいい感じでした。ベテランのバーテンダーがいて、スタッフのサービスも行き届いているし」
「海老原はどう言ってるんだ?」
「明日、連絡するという話でした」
「そうか」
返事を聞き終わる前に切れた。
「ったく、もっと何か言うことないのかよ」
良太は携帯に向ってぼそっと文句を言った。
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